薪ストーブ始生代111 倒木処理の依頼が来た。そしてチェーンソーのバーの曲がりについて
僕の暮らす村は、住民のほとんどが先祖代々の田畑や山を持っている。
で、その田畑や山の木を切ってほしいという依頼が時々僕のもとにもくる。
チェーンソーで薪作りをしているので、話を持ち掛けてくれる方がおられるのだ。
これは薪ストーブユーザーとしては本当にありがたい話だ。
先日も近所のおっちゃんがやってきて、「公園の下にあるわしの土地の木が倒れて、隣の敷地に侵入してしまってるから、切ってほしい」と依頼があった。
もちろん、伐採した木は薪にしていいとのことなので、喜んで切りにいくことにする。
ただ、ここでひとつ問題が・・・。
今、実は愛機チェーンソー(シングウ社製)のバーが曲がっていて真っ直ぐ切れない状態になっている。使えないことはないのだが、だんだん切り口が斜めになっていく。
立ち木を切ったり、胸高直径が太い木を処理するときはちょっと不安がある。
バーの曲がりをなんとか写真に撮ってみたのだが、分かるだろうか?
先の方がかなりクニャッといってしまっている。
これは去年の冬にくぬぎの倒木を必死こいて片付けていたとき、何度か大木にバーを喰われて、引き抜く方向を間違えて曲げてしまったものだ。
昔の記事にそのことを詳しく書いているので、よかったら下のリンクも覗いてみてほしい。
薪ストーブ始生代48 茶畑山でくぬぎの倒木退治①~まずは一本 - 薪ストーブクロニクル
慣れない倒木処理に緊張しまくって失敗したのだが、何事も経験なのでまあ前向きに捉えている。しかし、曲がったバーでやれるのか?
今回のターゲットはこいつだ。
画像が90°傾いているわけではない。
最初からほぼ地面に着いている倒木なのだ。
根本の部分はこんな感じ。
隣のおっちゃんは
「チェーンソーの調子が悪いなら、わしのを貸すよ」
と言ってゼノアの古いチェーンソーを貸してくれた。曲がったバーのものでやるよりは、と思ってありがたくお借りして、目立てしてガソリンとオイルを入れてさて使ってみようと思ってエンジンをかけた。
もしかしたら、かなりの古さなのでエンジンが死んでるかもしれないなぁと一抹の不安を抱えながら・・。
しかし、
「ぶるるるるん」
とチェーンソーは動き出した。
「こ、こいつ、動くぞ」
しかし、いざ切ろうと思ってエンジンをふかすと、恐ろしい色の排気ガスが出てきて、息ができなくなった。
排ガス規制がなかったチェーンソーなのか、それとも根本的に壊れてるのか?
無理矢理息を止めていくつか枝を払ってみたが、切れることは切れたが、息を止めて作業なんて危なくてダメだ。
貸してくれたおっちゃんには大変申し訳ないが、これは使わないことにして、こちらも不安なのだが、バーの曲がったシングウのチェーンソーで処理することに。
まあ、立ち木を伐倒するわけではないので、真っ直ぐ切れないだけでさほど危なくなかった。
処理した木のうち、細い枝はまとめて棚にして置いて、薪にできそうな太い玉だけ持って帰った。
細目の木を一本切っただけなので、できた玉もこれだけ。
あっという間に作業終了だ。
後日、家でこの正体不明の木を薪割りしたが、比重もそこそこあるのか、重量はずっしりしているのになかなか割りやすくていい木だった。
こんな感じの素直な繊維の木だった。
おまけの畑ネタ
5月の間、ぼちぼち収穫が続いていたイチゴも、そろそろ終わりが見えてきた。
ランナーから増殖する株で来年もイチゴ三昧の日々が楽しめるようにもう少ししたら準備をする予定だ。
ある休日、最後の大漁収穫になったイチゴを、焼いたクレープにのせて食べた。
クリームチーズと練乳を添えて。
感無量だ。
畑では、スナップえんどうや実えんどうが終わりつつあり、玉ねぎの収穫が始まっている。
ニンニクとジャガイモがそのあとにひかえている。
それが終われば、いよいよ夏野菜の登場となるはず。今年は自家採種した種も購入した種も、芽は出したのだが、温度が足りずに大きくならない。
夏野菜がこれからどうなるか、ちょっと不安だが、まあ何事も試行錯誤だ。
ようやく本葉が出てきたきゅうり。
今日も雨。
期待と不安を抱えつつ、季節は梅雨へと向かっている。
薪ストーブ始生代110 コナラの薪割り~コナラとくぬぎの違いについて
人生初の、コナラの薪割りがはじまった。
話によると、コナラはあまり長い間乾燥させると割りにくくなるらしい。まあ、針葉樹だって乾きすぎると割りにくいのは同じだが‥。
今回もらったコナラは倒木だったので、しばらく放置されており、やや乾燥がすすんでいる。
あまり節は多くないようだが、果たしてうまく割れるのか。
フィスカースのハンマー斧でど真ん中を撃ち抜く。
割れるものあるが、だいたい一発では割れず、3回、4回と降り下ろして、ようやく半割り状態になる。
なかなか素直じゃないぞ。
しかも、木の繊維が真っ直ぐじゃないので、意外と粘り強くてスパッと真っ直ぐに割れない。繊維のねじれに沿って波打ったように割れていく。
ただ、薪の状態になったときの重厚な手応えというか、確かな重量感は頼もしいかぎりだ。さすがは薪の王さまと呼ばれているだけのことはある。
しかし、思いのほか割りにくい。これはちょっと意外な発見だ。想像していたのは、くぬぎと同じような真っ直ぐに割れる素直な繊維の木だったからだ。
くぬぎは本当に繊維が真っ直ぐだ。もちろん節や股で繊維が曲がっていくが、それでも基本的に真っ直ぐ。
その繊維に沿って、比較的綺麗な薪が作られていく。
しかし今回もらったコナラは、けっこうねじくれた薪になってしまう。こんなものなんだろうか?それともこいつらが特殊で、普通のコナラはもっと素直に割れるのか?
今度は節や出っ張りがある玉を割ってみよう。
全力で斧を振りおろすこと、10回以上。割れる気配なし。
これはフィスカースの斧では歯が立たない。楔を使って割るしかない。
いやー骨が折れる。
楔を使ってなんとか半分にしたら、あとは斧で割る。半分に割れてくれるとなんとか斧でも割れる。しかしくぬぎと比べて圧倒的に割りにくい気がする。
苦労して割ったので、せっかくだからコナラ専用の薪置き場に並べていくことにした。
北向で日当たりは大したことないが、風通しは抜群なので、よく乾いてくれるはずだ。
東向きに置いたくぬぎ薪と好対称。
左がくぬぎ薪の山で右がナラ薪。
くぬぎとコナラの違い
薪の樹種についての話になると、コナラとくぬぎの事が語られることが多いように思う。
もしくは、くぬぎはそれほどポピュラーではないけど、僕の身の回りにたくさんあるので気になっているだけだろうか?
山に入ると、コナラとくぬぎが混在していることもよくある。初めは全然見分けがつかないが、葉っぱを見ればすぐに分かる。葉が細長いのがくぬぎで、ちょっとぷっくりした形の葉がコナラだ。ドングリのかたちも丸くてモシャモシャした帽子をかぶっているのがくぬぎで、細長くシックな帽子をかぶっているのがコナラだ。
左がくぬぎで右がコナラ。
どちらもブナ目ブナ科コナラ属、親戚みたいなものだ。
里山での利用方法の違いは、椎茸のほだ木などにはコナラの方がよく利用されて、炭焼きなどにはくぬぎが適しているらしい。
まあ、それも地域性の違いだろうから、厳密な分けかたではないが。
うちの家の回りはとにかくくぬぎだらけだ。
コナラはほとんど見かけない。これは一体どういうことなんだろうか。まあ、いいや。
さて、あとは実際に薪にしてどうか、ということに尽きるわけだが、これはこのくぬぎ薪とコナラ薪がしっかり乾燥した頃(2年後くらいか?)に、比較記事を書いてみたい。気の長い話ですね(笑)。
薪ストーブ始生代109 軽トラのデビュー戦・コナラの原木を入手する
毎日仕事が終わって家に帰ると夕方6時過ぎだ。まだ日は暮れず、外仕事が少しだけできる。
そんな今の季節がありがたい。
春野菜を収穫したり、夏野菜の世話をしたり、薪仕事もしている。
先日はエンドウ豆がたくさん採れた。
スナップえんどうやコリアンダー、イチゴや青菜もついでに少しずつ収穫した。
本格的な夏野菜の季節はまだ先だが、苗で買ってきた茄子などは一番果をつけ始めている。いよいよ暑くなってきそうだ。
日によっては、仕事から帰ったら、家に入る前に斧を握ることもある。
一日に一玉か二玉、ちょっとずつ割っていくのだ。風呂上がりのビールなどをイメージしながら割ると調子がすこぶるよろしい(笑)。
さて、ついに軽トラデビューをしたことは前回の記事で書いたが、その軽トラのドミーが早速デビュー戦を迎えることになった。
家から車で40分ほどの場所で原木を貰えることになった。薪仲間のみなさんと一緒に軽トラをかっ飛ばして取りに行った。
薪仲間の中の一人、手練れの薪ストーブユーザーKやんが40cmに手早く玉切りしてくれたコナラを積んで、その上からさらに細めの原木を積んだ。
Kやんは、この型のアクティはもっとバカみたいに積めるよ、とアドバイスしてくれたが、譲ってもらったばかりなのに積載オバーで破壊したら元も子もないので、ビビりにビビってかなり控えめに積んだ。
他の薪仲間の皆さんは荷台がはち切れんばかりに積みまくっていた(笑)。
積載量350キロの軽トラの荷台にいったいいかほどの原木を積んでも大丈夫なのか、ということについては、まだまだ経験値を積み上げる必要があろう。
さて、玉切りしてもらったコナラを家の駐車場に並べた。
なかなか壮観だ。
実は、我が家の周辺ではなぜかコナラがほとんど生えておらず、もっぱらくぬぎの林が広がっている。
そのため、いままで、まとまった量のコナラを貰うことがなかった。
薪の王さま、コナラをついに貰えてやや興奮ぎみだ。
さて、コナラを割りますか。
薪ストーブ始生代108 軽トラを入手する
原木を貰える機会があるたびに、軽自動車の小さい後部座席に無理矢理乗せていた。
まあ、こんな積み方では載る量もたかが知れている。
それに、最近とみに原木を貰える機会が増えてきた。
そんなことも重なって、というかかねてより薪運び用の軽トラがほしくて、色々調べていた。
その調べた内容の一部は以前の記事にまとめた通りだ。軽トラ三国志~薪ストーバーも注目?軽トラ覇権争い - 薪ストーブクロニクル
まあ、気にしない人にとって軽トラなんて壊れなければなんでもいい、と割りきってしまえば、本当にどれでもいいのだろうけど、せっかくなので調べてみると、なかなかに興味深かった。
そもそも、調べるまではデザインも含めて全く違いが分からなかったけど、調べていくにつれてだんだん違いが分かってきて、チラッと見かけただけでも、何代目のキャリーだな、とか、リアエンジン時代のサンバーだな、とか、見分けがつくようになった。
それでも、まあ軽トラの積載量や荷台の体積なんてほとんど誤差の範囲くらいの違いしかないので、どれを選んでも充分薪運びに対応してくれる。
デザインが気に入ったものがあれば、それを選べばいいようなものだ。
デザイン以外で多少選ぶ際に知っておいた方がいいことがあるとすれば、前回の記事でも書いたが、
①タイヤの位置(フルキャブかセミキャブか)
②エンジンの位置(フロント、リア、ミッドシップ)
③四駆の切り替え方法の違い(パートタイムかリアルタイムか)
実際、この3つの違いだけだ。
①のタイヤの位置については、衝突時の安全性を重視するならセミキャブだし、農道しか走らないから小回りが利いた方がいいからフルキャブがおすすめだ。小回りも利いてほしいけど安全性も重要なら一番新しいものにすれば、エアバッグや衝突時の安全性の高いフルキャブ車がいくらでもある。ただ、それでも最新型のフルキャブよりセミキャブの方がより安全性が高いという話もあるので、自分に合ったものを選ぶといいだろう。
②のエンジンの位置については、走りに多少差が出るようなので、拘りのある人は乗り比べてみるのもいいだろう。空荷の時は、なるべく後ろにエンジンがある方が走りが安定するようだ。
③は、四駆への切り替え方が、自動か手動かという違いだ。自動の方が効率が良さそうだが、コンピューター制御ということは壊れたら直りにくいのか?そんなことをチラッと考えたりする。
さて、ここまでが前回の記事のおさらいだ。ここからが本題。ひょんなことから僕も軽トラを持つことになった。
知人が不要になったので買い手を探していて、譲ってもらうことになったのだ。
さて、晴れて愛車となったのがこいつだ。
ホンダのアクティ。平成6年式の2代目アクティだ。
初代の丸目のアクティや3代目のセミキャブアクティとは少し雰囲気が違って、どちらかというと最新型の4代目アクティとデザインが似ている。
そして個人的にはバンパー部分が黒くて泥棒髭みたいに見えるのが、レトロで気に入っている。
最近の軽トラはスタイリッシュでシャンとしていたり、かっこよかったりするが、昔の軽トラはなんとなく愛嬌を感じる。
走行距離は96000キロ。
まだまだ走れるはずだ。
なぜか「ドミー」と名付けられた(笑)。
さて、この軽トラ、走りには全然問題がなかったのだが、ちょっとだけややこしいことがあって、譲ってもらった日から間髪入れずに車検の期限が迫っていたのだ。
まず、慌てて陸運局で名義変更してナンバープレートも変更して、すぐに車検してもらうべく、整備屋さんへ駆け込んで、ギリギリ間に合った。
しかし、その車検の日の当日に、突然「薪がたくさんあるから、軽トラで取りにおいで」という悪魔のささやき的お呼びだしがかかったので、さっそく軽トラのドミーのデビュー戦が行われることになった。
その顛末はまた次回。
春野菜の恩恵
苺は果物だろうか?
実はカテゴリー的には野菜に含まれる。
木に実るものは果物。
土にできるものは野菜。
一応そんな風にカテゴライズされるらしい。
その理屈でいけば、スイカは野菜で、アボカドは果物だ。
まあ、それはともかく・・・
うちの苺が少しずつ色づいてきた。
数日前はこんな感じだった。
あと一歩。
しかし昨日、仕事終わりの夕方、畑をパトロールしていると、なんともう赤く色付いているものがあった。
慌てて収穫したので畑での写真はないのだが、そのとき一緒に日野菜とスナップえんどうも採った。
赤、緑、紫
春の野菜もなかなか美しい色合いだ。
苺は絵に書いたように甘酸っぱくて瑞々しい味。
スナップえんどうは感動的なまでに甘い。
そして、日野菜。
細かく刻んで、塩揉みし、醤油と酢と白ゴマで合えた。
ご飯何杯もおかわりしてしまうほど美味しかった。
その日の晩ごはんでは、味噌汁に入れる青菜が冷蔵庫になかったので、あわてて畑の小松菜を一束とってきた。
うーむ、少しずつ畑に目鼻がついてきたぞ。
しかし肝心の夏野菜の苗はあまり大きくなっていかない。
去年の方がうまくいってるぞ。
なんでだ?温度が足りないのか?
軽トラ三国志~薪ストーバーも注目?軽トラ覇権争い
三国志。
三國志とも書く。
古代中国を舞台に、魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備が三つ巴で覇権を争った、という有名な物語だ。
物語、とはいってもそれぞれの登場人物は実在の人物であり、赤壁や合肥など、合戦の舞台となった場所も実在する。
ただ諸葛孔明が呪術で嵐を起こしたとか、張飛がたった一人で橋の上で何百人もの兵士を食い止めたとか、悪来典韋が全身に矢を浴びて直立したまま絶命したとか、史実に脚色が加わったエピソードが多いので、どこまでが史実でどこまでが創作か、ちょっと訳がわからないことになっている(笑)。
まあ、とにかくだいたい後漢末期ごろ、董卓や袁術、袁紹や曹操、孫堅など、地方の有力な武将たちが覇権を争い、群雄割拠の様相を呈して戦乱の世になるのだが、そのなかで淘汰が繰り返され、ついには魏と呉と蜀の三つの国が拮抗する形となる(そのような状況になったのは弱小国である蜀が生き残るための諸葛孔明の戦略だが)。その状況を称して「三国志」なのであるが・・。
いきなり何を言い出すのか、とお思いの向きもあろうが、現在の軽トラ業界の状況がまさにこの「三国志」状態なのだ。そこで、概要をつかんでもらうために本当にざっくりと書いてみた。三国志ファンの方には物足りない、もしくはそれちょっと違うんじゃないの、的つっこみもあるかもしれないが、あくまでも今回の話題の中心は軽トラなので、ご了承願いたい。
さて、軽トラだ。
薪ストーブユーザーの中でも、自分で巻き集めをする人たちにはかなり魅力的な薪ストーブアイテムのひとつだ。
イニシャルコスト、ランニングコスト、どちらも薪ストーブグッズとしては最高ランクに位置する、まさに、高嶺の花。
そのため、なかなか購入に踏み切れないのも事実で、実際、僕も軽トラを取得したい気持ちはやまやまだったけど、なかなか、踏み切れないでいた。薪や原木を運ぶのに、普通の自家用車の荷台でもなんとかなっていた。
まあ、もちろん軽トラを自家用車として普段の足にも使っている家もあるだろうし、農家兼薪ストーブユーザーなら、家に軽トラの一台もあるだろうから、事情はそれぞれだ。
しかし、サラリーマンなど、普通の暮らしをして普通の自家用車に乗っている薪ストーブユーザーが、薪集めのためにわざわざ「エクストラ軽トラ」を所有するというのは、やはり一種の贅沢というものだろう。いや、夢というべきか。
そんな薪ストーブユーザー垂涎のアイテム、軽トラ。正直なところ、昔は全部同じだと思っていた。というか、全部同じに見えていた。
しかし、調べていくと、これがなかなか面白かった。
まず、かつて軽トラ業界には、8社9車種の軽トラが存在した。まさしく後漢末期の群雄割拠の状況だ。
全く同じものに思えていた、しかも素人目にはデザインにも違いが見受けられない軽トラにどうしてそんなにたくさん種類があるのか?と。
軽トラ群雄割拠期(1960~1988)
まず、軽トラがそれぞれの覇を競っていた、群雄割拠の時代から見ていこう。
現在、新車で買える軽トラは以下の8車種。
②トヨタ・ピクシス
③三菱・ミニキャブ
④スバル・サンバー
⑤日産・NT100クリッパー
⑥ホンダ・アクティ
⑦スズキ・キャリー
そして番外編的に
⑨三菱・ミニキャブミーブという電気自動車がある。
その歴史を少し紐解いていこう。
現在の軽トラの系譜に連なるトラックが作られ始めたのは1950年ごろ、軽自動車の規格ができた頃だ。そしていまでも売られている車種は1960年代に登場する。
まず、1960年に名車ダイハツハイゼットが登場。1年遅れて、スズキのキャリィとスバルのサンバーが作られた。
少し遅れて三菱のミニキャブが1966年に登場。軽トラの世界はにわかに活況を呈し、群雄割拠の時代が始まる。
まず注目したいのがスバルのサンバーだ
1.スバル・サンバートラック
スバルのサンバーは「農道のポルシェ」と呼ばれている。その理由は、ポルシェと同じくリアにエンジンを搭載している構造にある。
現在ほとんどの軽トラは前にエンジンを積んでいる。
軽トラがリアにエンジンを置くとどうなるか。それは空荷の時、船のバラスト水の役割を果たして、重量バランスが前がかりになりがちな軽トラの空荷での走りがぐぐっと安定するのだそうだ。その走りの安定性とこだわりの数々で隠れたファンも多く、配送会社の赤帽が一貫してこのスバル・サンバーを配送車に指定していることでもその実力が垣間見れる。恐るべし、農道のポルシェ。
しかし残念ながら、このリアエンジンの農道のポルシェは2012年で製造を終えた。現在購入できるスバル・サンバーについては後述する。この製造終了の報を受けて、多くのサンバーファンがリアエンジンタイプの最後のサンバーを駆け込みで購入したらしい。
なんと、薪ストーブ界のカリスマ、ファイヤーサイドのポールキャスナーさんもその一人で、目の覚めるような鮮やかな青いサンバーを購入しておられた(笑)。
我こそは、と軽トラ界に次々に新しい車種が殴り込みをかけていたこの時期、今はなき車種も製造されては消えていった。まさしく群雄割拠の様相だ。
そして1977年にあの名車が登場する。そう、「農道のフェラーリ」と半ば冗談で言われた、本田技研のアクティトラックである。
2.ホンダ・アクティ
アクティはエンジンが車体の真ん中辺りにある。ミッドシップと言われる構造らしい。
そして貨物車としての軽トラの実力もさることながら、そんな貨物車でありながら走りへの飽くなき追求が詰め込まれている名車である。
1977年の初代(通称丸目のアクティ)、1988年からは2代目が登場する。1999年、20世紀が終わる頃まで製造されていたこの2代目アクティは、現在でも田舎ではよく見かける、バリバリの現役である。
薪ストーブの先輩の話では、この2代目アクティは構造が丈夫にできていたので、薪や原木をモリモリに載せても全然問題なかったそうだ。
スバルのサンバーのリアエンジンタイプが製造を終えた今、エンジンが前にないタイプの軽トラは実はこのアクティだけになる。
そして、生産台数ではキャリィとハイゼットに差をつけられているものの、現在でもオリジナルで製造を続ける軽トラ三国志の3国のうちの一つ、さしずめ劉備玄徳の「蜀」の位置にあるのがこのアクティなのである。
現在のアクティは4代目。
初代、2代目、4代目は基本構造が似ているが、セミキャブ方式を採用した3代目のみ、かなり独特のデザインと構造をしているようだ。
ここで、アクティを離れて、軽トラを選ぶ際の規準について書いてみる。
軽トラは、はっきり言って微妙なデザインの差以外、ほとんど違いが無いと言っていい。
しかし例えば同じ車名であっても大きく違う点がいくつかある。
軽トラの違いをおさらい
①エンジンの位置
さきほども書いたように、エンジンの位置の違いは大きい。しかし、2012年までのオリジナルのスバルのサンバーがリアエンジン、そしてホンダのアクティがミッドシップである以外、全ての軽トラがフロントエンジンを採用している。これは覚えやすいし、テストにもよく出るのでキチンと押さえたい(笑)。
②フルキャブORセミキャブ
軽トラにはキャブオーバーの方式の違いがある。かつて軽トラはすべてフルキャブ方式だったが、2000年代に一度安全規準の見直しからセミキャブ方式の軽トラが多く作られ、そしてまた現在、全ての軽トラがフルキャブ方式に戻った。現在新車で買える軽トラは全てフルキャブなので(新車なのに古株と覚える)、セミキャブ方式の軽トラがほしかったら中古車を探すしかない。
ではフルキャブとセミキャブは具体的にどう違うのか。
分かりやすくホンダアクティで比べてみよう。
3代目のセミキャブアクティはこれ↓。
4代目のフルキャブアクティはこれ↓。
何が違うか。それは、セミキャブは運転席より前にタイヤがあり、フルキャブは運転席の真下にタイヤがある、その違いだ。
それぞれのメリット、デメリットは、
セミキャブ・・メリットは安全性。運転席より前にあるタイヤがクッションになるので、正面衝突をしたときにまずタイヤがダメージを受けて運転席が守られる。デメリットは、運転席、特に足元が狭く、また小回りが効かないので、農道などの狭い道を運転しにくい。
フルキャブはメリット、デメリットがセミキャブとちょうど逆で、運転席が広くて小回りが効く代わりに、セミキャブより安全性が低い。現在販売されている新車のフルキャブ車は、最新技術で車体の剛性を高めて強化されているらしいが、それでもセミキャブ車のタイヤクッションの安全性には敵わないらしい。
ちなみにダイハツのハイゼット、スバルのサンバー、トヨタのピクシスは一貫してフルキャブ方式で、セミキャブ車はない。
そしてホンダのアクティとスズキのキャリィなどは中古車を探す際、フルキャブとセミキャブが渾然一体となっているので、注意が必要だ。
③OEM
軽トラ購入のための違いを知る最後のキーワードはOEMだ。OEMとはOriginal Equipment Manufacturerの略で、ようするに他社ブランドの製品を製造することだ。このOEM製造が始まる1989年から軽トラを巡る覇権争いの状況が大きく変わっていくので、その辺りを書いていこう。
軽トラOEM期(1989~2013)
それまで、自社のオリジナル軽トラの製造が中心で、基本的に自社の軽トラで業界のトップを勝ち取ろうと切磋琢磨していた(のかどうか、ただの妄想だが)軽トラ界に、1989年激震が走った(のかどうか知らないけど)。
マツダ(MAZDA) がスズキキャリィのOEM車であるスクラムトラックを発売したのだ。
これは、名前こそマツダスクラムだが、その中身はエンブレム以外はほぼ全てスズキのキャリィだ。つまり性能もキャリィに準ずるということだ。
自社での軽トラの開発をせずに、キャリィのモデルチェンジに合わせてマツダスクラムも同じようにモデルチェンジを繰り返した。
これは三国志的に捉えるなら、スズキ・キャリィ国に併合されたに等しいではないか(ほんと好き勝手書いて、本当にごめんなさいマツダの関係者さま)。
ロータリーエンジンの開発など、独自の路線を走り続けるマツダは、軽トラ界での覇権争いから真っ先に降りて、別の路線で勝負することにしたのだろう。このようにして、まず、スズキ・キャリィ国が領土を拡大していく。
そのことに待ったをかけるように2011年、あの世界のトヨタ自動車が軽トラを発売する。ピクシストラックだ。
しかし、このトヨタのピクシストラックは実はダイハツハイゼットのOEM車であり、トヨタ帝国は実はダイハツのハイゼット国に併合されていたのだ。
スズキキャリィ国に負けじ、と勢力を拡大していくダイハツハイゼット国。
販売台数でも、20世紀を通してスズキキャリィが販売台数日本一だったのだが、21世紀になってダイハツハイゼットがトップに立っている。個人的な想像だが、これは一貫してフルキャブ方式の利便性の高い軽トラを作り続けたからと言うのが理由の一つではないか、と思っている。というのは、キャリィやアクティなど多くの軽トラが、安全性のためにセミキャブ方式を採用した時期にダイハツハイゼットは頑なにフルキャブ方式を守り、その時期に販売台数トップに立っているからだ。
ともかくも、軽トラ界の覇権争いが、激化し、淘汰されつつある状況がはっきりしてきた。
さて、そんなこんなで2012年、さきほども書いたが、「農道のポルシェ」と言われて熱い支持を集めていたスバルのサンバーがついにダイハツハイゼットの軍門に下る。スバルサンバーがハイゼットのOEM車となるのだ。1961年から続いてきた伝統のリアエンジン車が姿を消すことになる。まるで三国志において、正統なる有力者であった袁紹を筆頭とした袁家が曹操に滅ぼされた出来事を彷彿とさせます。
これで勢力図はかなりシンプルになってきた。
頑なにフルキャブ方式を貫き、トップに躍り出ようとしているアクロバティックなダイハツハイゼット。
着実な足場で勢力を拡大していく、ベーシックなスズキキャリィ
完全な独自路線で孤高の道を行く、ミッドシップのホンダアクティ
そしてそこに三菱のミニキャブと日産のNT100クリッパーという勢力がまだ粘り強く対抗していたのだった。
1966年からほぼ半世紀の歴史を持つ、伝統ある三菱ミニキャブトラック。
日産のNT100クリッパーは2003年に登場したのだが、実は三菱ミニキャブのOEM車だったのだ。三菱・日産連合軍は連合すること10年。しかし2013年についに日産が脱落し(と書くと感じ悪いですね、重ね重ねすみません)、ついで2014年には三菱ミニキャブも脱落。ともにスズキキャリィの傘下に入ることになったのだ。
ちなみに三菱ミニキャブは2011年にミニキャブミーブという軽トラの電気自動車を発売している。家庭電源でのフル充電で100キロ以上走れるので、農家などで長距離を走らないなら充分すぎる性能だったのではないだろうか。三菱自動車の燃費偽装事件がきっかけで製造を中止しているのが惜しまれる。
軽トラ三国志期(2014~現在)
さて、2014年に三菱ミニキャブがスズキキャリィのOEM車となったことで、ついに三国志状態になった軽トラ界。
悪のりついでに書いておくと、その三国は以下のようにあてはめられる。
呉の孫権を思わせるスズキキャリィ
蜀の劉備のようなホンダアクティ
2018年現在の状態を書いておこう。
魏のダイハツハイゼット
頑ななフルキャブ方式を貫き、販売台数でトップに立ったハイゼットは、トヨタのピクシストラック、スバルのサンバートラックを傘下に修め、ハイゼット三兄弟と呼ばれる鉄壁の布陣を敷いている。
現在のハイゼットはいままでの軽トラの常識を打ち壊すようなカラーバリエーションを揃え、若者や女性の心をがっちり掴んでいるように思われる。コストダウンと後の補修の簡素化のため、基本的には白い軽トラが多く、青や紺や黒など渋い色の軽トラはグレードが高いモデルでしか選べない軽トラ界にあって、ハイゼットのカラーバリエーションは驚きに値する。そして、ハイゼットジャンボ、という座席の後ろにスペースがあるモデルもとても人気があるようだ。魏の曹操顔負けに常識に捕らわれないやり方で、このまま軽トラ界のトップに君臨し続けるのか、注目だ。
呉のスズキキャリィ
魏のダイハツハイゼットと比べると、やや地味な印象のキャリィだが、まさに呉の孫権のような着実な方法で力をつけてきたように思う。
長い間、日本でもっとも売れていた軽トラだけのことはあり、日本中どこの整備屋さんにいっても修理の部品とノウハウがあるそうだ。もともと実用一辺倒の軽トラだけあって、長く確実に使える方がいいという人は多い。そのため、地味に使いやすく、地味に中古車が多いスズキキャリィは根強い人気がある。その根強さは、マツダスクラム、日産クリッパー、三菱ミニキャブ、と次々と傘下に修めていったことでも分かる。
つい最近ではスーパーキャリィという座席の後部の広いモデルが発売になるようで、ハイゼットジャンボとのガチンコの競合が起きること必至だ。
個人的には、最新型のスズキキャリィの紺色のモデルが、軽トラ版のジムニーのようでなかなか素敵だと思っている。
↑これが最新型のキャリィの紺色
蜀のホンダアクティ
さて、最後にホンダアクティだ。販売台数ではキャリィやハイゼットに遅れをとっているものの、魅力的な軽トラであることには違いはない。なにより、群雄割拠の高度経済成長期から平成が終わらんとする今日まで、粘り強く独自の軽トラを作り続けてきたことはものすごいことだ。
エンジンの位置からして独自路線を貫くホンダアクティだが、もう一つ、ホンダアクティには独自のシステムがある。それがリアルタイム4WD方式だ。
現在の軽トラはパートタイム4WD方式のものがほとんどだ。パートタイム、つまり、普段は燃費のよい2WDで走って、雪道や悪路など4WDで走りたいときには、手動で(スイッチやレバーで)切り替えることができるというもの。
しかしホンダアクティは昔からリアルタイム4WD方式を採用している。これはタイヤがスリップ時だけ自動的に4WDに切り替わるというものだ。
燃費のことを考えれば、本当に必要な時だけ四駆になるのでもっとも無駄がないといえる。
制御しているコンピューターがおかしくならない限りにおいて、だが(笑)。
ホンダアクティは他の会社のOEM車になっているものがない。あまりにマニアックなそのコンセプトがそうさせるのか?それとも何か自動車業界のしがらみでもあるのか。
アクティはアクティだけなのだ。
三国志の歴史では、まず諸葛孔明が亡くなったあとに蜀が衰退し滅亡。後に粘りに粘った挙げ句、呉も滅ぼされて魏が勝利を収めるものの、その魏もまた別の王朝にとって代わられる。
実際の軽トラ界はこれからどのような歴史をたどるのだろうか?
無理矢理三国志に当てはめて長々と書いてきた軽トラの歴史はこれにて一応おしまい。
なぜこんなことを書いたかというと、僕も軽トラを取得することになったからなのだ。
さて、ここまで書いた挙げ句に一体いつの時代の何をの車種を選んだのか、それは次回また改めて書くことにする。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
薪ストーブ始生代107 ネスターマーティンを端材だけで焚いてみる。そして、原生林について
ほんの数日だったが、急に寒い日が戻ってきた。
薪ストーブを焚かなくても過ごせなくはないが、ちょうど割っていた端材が少しあったので、夜の数時間、薪ストーブとともに過ごすことにした。
外気温はぐんぐん下がり、夜明けには一桁、しかも5℃を下回ってかなり寒くなっていた。
寝る前の8時、9時代も外気温は10℃以下、保温性の高い室内でさえ18℃くらいまで下がり(まあ充分暖かいけど)、「なんかいつもより肌寒いねぇ」ということで焚き付けをスタートしたのだった。
焚き付け材は細かく割った端材。
だいたい細かいものが、10本~15本ほど。
↑こんな感じの焚き付け材だ。
で、しっかりネスターマーティンの鋳物を温めて、約45分で巡航運転に達する。
その時点で、結構暖かくなってきているので、少し太めに割った端材を数本入れれば、それでお腹いっぱいだ。
ナラやくぬぎなどの広葉樹は、この時期はお呼びじゃない。それどころか、針葉樹の薪さえ使わず、ひたすら廃材や端材だけで暖まる。
それだけで充分だ。火持ちが良い良質の薪は部屋をガツンと温めるので、この時期の室温だとやや暑くなりすぎるきらいがある。
ただ、これはあくまでもネスターマーティンという、やや構造が独特の薪ストーブだからこそできるのかもしれない。他のストーブのことはよく分からないが、ファイヤーピットさんも以下の記事のように書いておられる。
廃材だけでは絶対に無理 | 函館の薪ストーブ屋 ファイヤピット 熾壺日記
前にも書いたのでしつこいかも知れないが、端材や廃材だけで薪ストーブをコントロールするのは、本当はとても難しいらしい。
しかし、ネスターマーティンという薪ストーブは、プリヒーティング(あらかじめ温められた)非常に少ない空気で焚く構造なので、廃材、端材のようにパッと燃え付きてしまいそうなものでも、結構じわじわと燃えてくれて、いい感じで「あったけー」になるのである。
その日の寒さに応じて2、3時間焚く。
お風呂上がりに部屋がポカポカなのは、この時期は何気にありがたいのだ。
五月になってまで薪の使いすぎを気にせず、余り物の端材たちだけでこれだけ暖がとれるのは、薪貧乏の我が家には助かっている。
おまけ:
ここ最近、また山に入る事が多い。
毎日同じ山を登るのだが、なかなか面白いものが見られる。
ある日、その場所は濃霧が立ち込めていた。こんな感じ。
水墨画の世界と言うか、なんというか。
幽玄な雰囲気だ。かなり山深い場所で、この周辺には植林された針葉樹は1本もなかった。ひたすらブナが生い茂り、原生林と呼びたくなる。
天気の良い日に同じ場所を歩くと、こんな感じになってた。
おお、なんかかっちょええなぁ。
しかし同じ場所とは思えないくらい、ガラリと雰囲気が変わった。日本の山にも、人が入りにくい場所にはこのような原生林がまだたくさんあるのだろうか?
さて、では原生林ってそもそもなんだろうか、と調べてみた。厳密にいうと、「原生林」というのは結構難しいものらしく、植物の集まりが徐々に発達を遂げて(遷移と言う)、次第に森林になっていく。森林というは植物の集まりの形態としてはものすごく完成された状態だそうで、突き詰めた森林の状態の事を極相(極相林)と呼ぶのだそうだ。
その極相林が、人の手での伐採や災害による破壊を長年免れ続け、次第に高木化し、落ち葉や枯れ木などで土壌がより深く肥沃になっていき、さらに突き詰められた状態で保たれている森林を初めて原生林と呼んでいいのだそうだ。
その意味では、僕が出会ったブナの森林は、原生林と呼ぶにはまだ大径木が少ないのだろうか。
破壊を免れて、いつか堂々たる原生林に育ってほしいと思った。
しかし、薪ストーバーがつい考えてしまうのは、こんな天然のブナの木だと、極上の薪になるのだろうなぁ(笑)とか、そういう事だ。
仮に伐採したところで、こんな山深いところから下界まで持って降りるのは不可能に近いが・・・。