種のはなし~在来種、固定種とF1種~
2月から4月、5月頃まで、その年の夏に収穫する野菜の準備をする。
畑を起こしたり、種をまいて苗を育てて定植(畑に植え替えることだ)したり。
で、ここまでの間ですでにかなりの種類の種を蒔いた。
・トマトが3種類(大玉のマーマンド、小玉のブラジルミニとイエロートマト)
・ナスが2種類(青ナス、日本長ナス)
・ピーマン系4種類(万願寺唐辛子、カリフォルニアワンダーピーマン、パプリカ、プリッキーヌ)
・レタス系2種類(サラダ菜、オークリーフレタス)
・キュウリ(品種不明、知り合いの方に譲ってもらった)
今、ベランダのポットや苗箱にこれだけの種が蒔かれている。
さてそんな野菜の種だが、普通はホームセンターや園芸店、種屋さんで買うだろう。
しかし、現在販売されている種は、そのほとんどがF1の種と呼ばれる、一代限りの野菜の種である。一代限りとはどういう事かと言うと、種をまいて育った野菜からもう一度種を採って蒔くことができないという意味である。
いや、厳密に言えば多くのF1品種は、種を採ってもう一度蒔くことはできるのだが、2代目が親の長所を引き継がないので、思い通りの野菜が育たないのだ。
家庭菜園なら、品質のバラけた野菜ができても、気にせずに食べればいいかもしれないが、プロの農家では思い描いているものと違う品質の野菜ができてしまうと、最悪の場合、出荷すらできずに畑に埋め戻すことになってしまう。
だから、今では、プロの農家でもほとんどがタキイやサカタのタネなどのF1の種を毎年購入している。
これはオーガニックの世界でも例外ではない。完全無農薬で野菜を有機栽培している農家であっても、自分のところで自家採種までしているところはほとんどなく、あってもせいぜいオクラやかぼちゃなどの採種が容易な品目に限定される。
残念ながら、これが現実だ。
もちろん、F1が良くないとか、美味しくないとか、そういう意味でこの話をしているのではない。
ただ、このブログのコンセプトでもある「食とエネルギーの自給」という観点からすると、毎年子会社から種子を買わなければいけないなんて、自給しているとは言えない、というやや意固地な理由もあって、種も自給することを目指す。つまり、F1品種ではなく、固定種、在来種の種をつかって種採りをする計画だ。
今ベランダで定植を待つ野菜の種も全て固定種、在来種だ。毎年種を採っても、毎年同じ性質の野菜が育つ。いや、同じではなく、毎年少しずつその畑の環境に適応して微妙な変化を遂げていくはずだ。
昔は、どこの農家でもそうやって自家採取しては次の年にその種を蒔くというサイクルを連綿と繰り返してきたのだ。
F1が駄目なのではなく、このまま、みんながF1品種ばかり使うようになってしまったら、種の多様性が失われて、トマトは桃太郎だけとか、ナスは千両とか、育てやすい品種ばかりになってしまう。
現に、遺伝子組み換え種子先進国のアメリカでは、この100年ほどの間に野菜の品種の9割が姿を消してしまったらしい。
人種や文化の多様性を否定している現在の大統領と同じことをしているようなものだ。
このままでいいのだろうか。
まあ、そんな大それた事も考えつつ、しかしもっと単純に自分で種を採ってまた育てるという循環にたまらない魅力を感じるし、なによりも楽しそうだ。
そんな気持ちで、野菜の自家採種に挑戦することにした。
プロの農家でもやらない自家採種だ。どんな結果になるかは、全然わからないけど・・・。