薪ストーブクロニクル

食とエネルギーの自給を目指して

「僕はお金を使わずに生きることにした」

夏目漱石がこんなことを書いている。

 

社会における事実や現実が道徳や行動規範を作るのであって、その逆ではない。学校で習う道徳を社会に当てはめるのは無意味なことだ、と。

 

どういうことかというと、教科書に「人に優しくしましょう、他人を思いやりましょう」と書いてあるから、優しくしたり思いやったりするのではない。他人のことを思いやらずに自分勝手な生き方を誰もがしてしまうと、結果として世の中が崩れていき、暮らしにくい社会になってしまうから、人に優しくした方が結果として社会が良くなる、という考え方だ。

 

漱石先生がおっしゃっているのは、今の世界を、今の現実を見て、自分がどう行動するのが最も良いかを自分の頭で決めろということだ。

 

さて、では今の世の中はどうなっているか?

過剰なコマーシャルと過剰な便利さと過剰なサービスをてんこ盛りにして、気候変動も経済格差も紛争の空気も見て見ぬふりをせざるを得ないくらい、忙しい日常に埋没してるようだ。

さしずめ、現代の道徳は「お金」だろうか?

金がないと生きていけない、という社会の現実を前に、お金を中心に世の中を回しているんじゃなかろうか。

しかし、これは本当に社会の現実を見ていると言えるんだろうか。

本当に大切なことを見ずに暮らすための方便として、多忙な日常とお金への傾倒があるようにしか思えないのだが。

そして、このまま突き進めば、必ず戦争が起きるし、必ずある種の社会の崩壊が待っている。

それを薄々感じながら、それでも忙しさにかまけるというのは、本当に社会の現実を鑑みた道徳的な生き方と言えるだろうか?

 

今の世界に本当に必要な、道徳的な行動は、お金で動かせない価値観を取り戻すことなんじゃなかろうか。

お金がなくても生きていける、そんな暮らし。

地域の人間関係を取り戻し、エネルギーや食べ物といったライフラインをお金に頼らずに作ることができた、少し前の日本の暮らしを参考にさせてもらうわけにはいかないのだろうか?

 

マークボイルさんという人の書いた「僕はお金を使わずに生きることにした」という本がある。

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僕たち(僕と奥さん)のバイブルとでも言うべき本だ。

1年間、全くの「金なし」で快適に過ごす、という実験をしたアイルランド人の男性の話だ。

ユーモア全快の、悲壮感のあまりない素敵にポップな本なのだが、恐ろしく胸に響く。

個人的にはもっと食べ物の自給において、農業を頑張って欲しかったが、それでも、実用性も抜群で素晴らしすぎる内容だ。

薪ストーブで暖をとるので、薪割りや薪の乾燥への言及もあり、薪ストーブユーザーとしても親近感が湧く。

 

この本を翻訳している吉田奈緒子さんという人がまた面白い生き方をしている人なのだが、ここでは省略する。

紀伊國屋書店から出ている。ぜひ読んでみてくださいませ。

 

スウェーデン政府が自国民に向けて、戦争に備えるよう通達を出したというニュースを読んで、そのあまりにタイムリーでリアルな今を伝える内容に戦慄を覚えた。

これが、僕たちが今生きている世界なのだ。

目を背けちゃいけないんだろう。

どうする?

 

とりあえず、薪を割ろう。

そして、種を蒔こう。