薪ストーブ音楽館③チェロソナタ第3番(ベートーヴェン)
寒い冬の夜。薪ストーブが煌々と燃える部屋にテレビは似合わない。
もちろん、部屋を暗くして静かに薪がはぜる音に耳を傾けるのも素晴らしい。
しかし、時には炎のぬくもりを感じながら、じっくりと音楽を聴いてみるのもいい。
そんな、薪ストーブを傍らに置いて聴きたい音楽を紹介する「薪ストーブ音楽館」。今回はこの一枚。
ピアノがケンプでチェロがフルニエ。もちろん、演奏家などある意味誰でもよい。素晴らしい曲であり、素晴らしい演奏である。録音が古すぎないため、古色蒼然という感じではなく、しかし非常にクラシカルな演奏で、すばらしい。大げさな演奏ではなく、どちらかと言えばテンポと速めで淡々と演奏している。それが、ベートーヴェンの凄さを浮き彫りにしている感じだ。
チェロの音色と薪ストーブの相性は最高だ(と個人的には思っている)。ヨーヨーマのような灯台随一の名人の演奏も素晴らしいが、このフルニエという人は、とにかく音色そのものにうっとりさせられる。絶品の演奏だ。また、ピアノのヴィルヘルムケンプは、あえて説明するまでもないくらいだ。聴けば、その飾らない音から音楽を愛する心情がじわじわと伝わってくる。
曲冒頭の野太いチェロ単独の音色から始まり、美しい旋律ではなく、どちらかと言えば武骨な建築物をチェロとピアノが築き上げていくかのようだ。いや、美しい幾何学模様の織物だろうか。
チェロの音楽をじっくり聴くなら、ぜひこの一枚から入って欲しい。その後、ドボルザークのコンチェルトでもバッハの無伴奏でも好きなものを聴けばよいと思う。
カップリングで(というかメインで)同じベートーヴェンのピアノトリオ大公が入っているが、そちらも良い。まず曲が良すぎる。この曲に関しては、非常に古めかしい録音になってしまうが、カザルストリオの演奏がよいと思う。特に薪ストーブのぱちぱち薪のはぜる音と、そのCDの録音に起因するレコードのようなぱちぱちというノイズは、うまく馴染むのではなかろうか?