四月の愚か者
今日は四月の愚か者。
日本で、世界で、愚か者たちが踊り、はしゃぐ。
あるものは札束を握りしめて化学プラントを動かし、あるものはデスクトップをにらみながら悪態をつく。
あるものは未来へとかかる橋を焼き落とし、あるものは過去を都合よく書き換える。
愚か者たちがまたやってるぞ。
性懲りもなくやっている。
神様になった気でやっている。
ドローンを操り、豪華客船を操り、学園を操る。
種子を操り、生殖を操り、宇宙の摂理を操る。
きっと操るつもりで操りそこねて、失敗するだろう。
それも嘘で固めて誤魔化すだろう。
正直者が携帯電話の爆発に巻き込まれて死ぬ。
その遺体は焼かれ、灰になり、田畑にまかれる。
苗が植えられ、稲が育ち、米が実る。
残り少なくなった農夫たちが収穫への感謝をささげるだろう。
その風景全てを大型重機がのっぺらぼうに塗りつぶす。
塗りつぶす。
塗りつぶす。
四月の愚か者たちが今日も世界のバランスを少しずつ、しかし着実に崩していく。
それはジェンガか、黒ひげか。
ドミノ倒しの会場に紛れ込んだ酔いどれソーリ。おっとあぶない、気をつけて。カードゲームとご一緒したまま地球儀を壊しちまうよ。
四月の愚か者たちの胃袋を充たすのは、正直者の農夫たちの米だ。
正直者の農夫たちを温めるのは、素朴な薪ストーブだ。
陽気な農夫たちは、世界が壊れゆく姿を見ながら、それでも今年も種を蒔くだろう。
それなら俺は薪でも割ろう。
世界が壊れゆく姿を見ながら、それなら俺は薪を割ろう。そして、ほんの少しずつ種を蒔こう。正直者の農夫を真似て。
今日は四月の愚か者。
今日は四月の愚か者。
今日は四月の愚か者。
そんなことをうそぶく
今日はエイプリルフール(四月の愚か者)。