薪ストーブ前史・総集編①「はじまりはいつも針葉樹」
薪ストーブ導入前の薪集めについて連続で書いてきた「薪ストーブ前史」。何回かに分けて書いたシリーズを樹種ごと、企画ごとにまとめて、総集編として再録する。もうすでに過去の記事を読んでいる人はすっ飛ばしてくれて構わない。とりあえず最初は針葉樹についての総集編だ。
1.針葉樹の玉をたくさん貰った
時計の針を少し戻そう。
実家の建て替えの際に、「薪ストーブを設置したらいいんじゃないかな?」と軽い気持ちで提案してから半年。実家では、薪ストーブの導入が真剣に検討され始めていた。
その頃、事情があって僕は病院にいた。ちょうどドナルド・トランプとヒラリー・クリントンによる大統領選が行われていた、その日だったので忘れもしない、やや暑かった秋。
病院の待合室のテレビは開票速報がひっきりなしに情報を更新していた。
世界の趨勢を決めることになりかねない、重要な選挙。そして、それとは無関係に動き続ける自分の人生。
まさかそのアメリカ大統領選と時を同じくして、自分が必死こいて薪を割ることになるとは、さすがに想像できなかったけれど、事実、薪を割っていた。しかも、乾燥した針葉樹の玉…その数50以上。
まずは、その辺りから話を始めることにしよう。
知り合いのお蕎麦屋さんが、薪ストーブユーザーで、何故か(本当に何故か)山を所有していて、玉切りした大量の針葉樹を敷地に置きっぱなしにしていた。その風貌からして、すでに玉切り後1年ぐらいは経過しているものと思われる。
そして、何故か、自分達は使わないから好きなだけ持っていっていいですよ、と言われていた。
昔は「薪ストーブで針葉樹は焚けない」と都市伝説のように伝えられていたけれど、今ではよく乾燥させれば焚けるというのが常識になっている。
その当時は、まだ薪を割り始めたばかり。
まだほとんど薪がないけれど、そして薪棚すらないけれど、この針葉樹の玉を割ったら、結構な薪ができるんじゃないのか、と見ただけで心が踊る。
というか、木をもらえることがこんなに嬉しいことだとは、薪ストーブの導入を考えるまで、想像さえもしていなかった。
ありがたく頂戴することにして、ちょうど帰省していた兄をつかまえて、車2台に満載に積んで、実家の庭に運び込んだ。
こんな感じでウッドデッキに前後2段に置いて、
それでも置けないぶんは、別の場所に。
おおおお!
玉がいっぱい!
本格的な薪割りが始まるぞ!
2.フィスカースで針葉樹を割る
フィスカースX25というフィンランド製の斧を使って割りまくっていく。
柄が空洞になっていて軽く、その分斧頭だけがやたらと重く感じる。使い始めた頃は、少し軽いタイプのはずのこのX25でもかなり疲労感を覚えたが、振り慣れてくると、あまり重く感じなくなってくる。初めての斧なので比較のしようもないが、特に不満はなく、他のメーカーの斧がほしいとは今のところ思わない。近未来的なデザインも、だんだん気に入ってきた。
話に聞いていた通り、乾燥が進んだ針葉樹は水分が抜けて重くないのに簡単には割れてくれない。
というか、油断して振り下ろすと刺さったまま抜けなくなる。これは斧のせいではなく、乾燥の進んだ玉の特徴らしい。というのも、少しだけあった広葉樹の玉は径の大きいものでもフィスカースでパカパカ割れたからだ。
慎重に玉の割れ筋を見極める。薪割り歴数週間というずぶの素人のくせに、かっこをつけて筋を読む。といっても、割れ筋は実は一目瞭然だ。乾燥の進んだ玉には、はっきりと繊維の裂け目が開いてくるのが見える。そこに正確に斧を振り下ろせば、
メキッ
という音を立てて玉が真っ二つに割れてくれる。一度半分に割れれば、あとは筋を意識しなくても、好きなようにパカパカ割れてくれる。ほとんど手応えもなく、その分達成感も少な目だが、とにかく、割りまくる。
針葉樹の薪が大量に作られていく。
乾燥した直径40センチの針葉樹の玉 VS フィスカースX25の軍配は、フィスカースに上がった。
3.針葉樹専用の薪棚を作る
そうこうしているうちに、新しい問題が発生。
適当に平積みしていたら、あっという間にスペースがいっぱいになってしもた。もう薪を置く場所がない。
仕方がない。仮設の薪置き場も限界なので薪棚を作ろうと思う。しかし、家を建て替えているということもあって、なかなか敷地が自由に使えない。
そこで農機具などを置いていた木製の棚を改造して薪棚に作り替えることを思い立った。
適当にインパクトドライバーで筋交いなどをし、薪がこぼれ落ちないように、側面には原木から剥ぎ取った木の皮を利用した。
しかしこの薪棚、もともと強度が全然ない柔な作りなので、ヘビー級の広葉樹は乗せられない。比重が低くて軽い針葉樹専用薪棚なのだ。 なんせ、手始めに広葉樹を乗せたところ、一列積んだだけであっという間に崩壊してしまったのだ。補強をしたものの、それ以降は怖くて広葉樹は乗せていない。針葉樹だけでずらっと並べてみた。
まだまだ割り始めとはいえ、薪棚に薪が積み上がっていく光景は、想像していたよりもずっとずっと、達成感があった。これは不思議な発見だった。
なぜ、薪が積み上がっている光景はこんなに見飽きないのだろう。針葉樹なのに。この程度の量なのに。不思議だ。
まだまだ薪割り一年生。更なる達成感が待っているはずだ。
お蕎麦やさんにもらった50ほどの針葉樹の玉はこれで片付いた。しかしまだまだすることは山積しているのだった。
4.針葉樹専用薪棚についての補足
針葉樹専用薪棚について、横の支えに木の皮を利用したと書いたが、いまいち伝わりにくかったようだ。
つまりこのようにしたということ。
拡大すると、こんな感じ。
横に木をつける手間も省け、さらに樹皮の乾燥もできて一石二鳥なこの方法。
杉の皮、桜の木の皮などを使ったけど、針葉樹の皮の方が素直にまっすぐになってくれて利用しやすかった。
広葉樹の樹皮はごつくて、ゆうことを聞いてくれない。
ちなみに、樹皮は木の色んな部位のなかで燃やしたとき最もカロリーが高いらしい。
焚き付けや、火力が弱くなってきたときのブースターとして利用するために、せっせと乾燥させている。
早く燃やしたいぜ。
後記
その後、割り忘れていた玉なんかもすべて片付けて、針葉樹の薪は本当にたくさんできた。
すぐ燃え尽きて、薪としては物足りない、という話も聞く。焚き付けや、ストーブの温度を上げるのに最適だという話も聞く。
広葉樹を手にいれるのにやや手こずっているので、この大量の針葉樹をうまく使って、広葉樹の薪の消費を抑えられたらいいのだが。
どうなることやら。