パプリカの都市伝説
パプリカには都市伝説がある。
有機栽培にチャレンジした農家が、収穫があったにも関わらず、そしてそれなりに収入もあったにも関わらず、一年で栽培をやめてしまうらしい、という噂である。
そもそもパプリカとは何者なのか。
ピーマンとはどう違うのか。
パプリカとピーマンはともに、ナス科トウガラシ目の栽培品種で辛味をもたず、ベル型の果実をつける。パプリカの方がやや大ぶりで、綺麗なベルの形になり、赤や黄色、紫など様々な色に熟す、という違いがあるくらいだろう。
日本中に有機でピーマン栽培をする農家は数えきれないくらいいるし、ピーマンは栽培が比較的簡単なので、失敗したから、とやめる人もほとんど聞いたことがない。
パプリカはハンガリーで品種改良されて作り出された品種である。
ハンガリーの風土に適した野菜なのだろう。日本で(あくまでも無農薬にこだわって作ると)こんな状態になる。
分かりにくいけど、すべての枝にびっしりとカメムシが張りついているのだ。
その数、一株で数十から百匹くらいか、いやもっといるかもしれない。
すべての株に分け隔てなく、カメムシがびっしりだ。
確かに夏野菜にはカメムシが付く野菜が少なくない。しかし、このパプリカのカメムシの数は尋常ではない。
ただ、不思議なことに、このカメムシの大群に寄生されたパプリカ、普通に実をつけるのである。葉っぱの食害もない。ある意味、共存しているのだ。
ただ、全然元気がなくて、取り除いても取り除いてもだんだん弱っていっている気はする。
そして、葉っぱにこのような美しい刺繍のような卵を産み付けて、さらに増えていくのだ。
困るのは、このカメムシが周りの他の夏野菜に広がっていくことだ。
トマトはずるけてしまい、ナスにはかじられた痕が残り、空芯菜は萎れていった。
奴等(カメムシ)はパプリカをベースキャンプとして、周りの野菜を食糧として、一気に繁栄するのではないか。
つまり、無農薬で育つことは育つが、周りの野菜が大変なことになる。それが、パプリカ栽培が一年で終わる原因なのだと推測する。
そして御多分に漏れず、僕もおそらくはパプリカの栽培は今年だけだろう。
いかに畑にいるカメムシは臭くないとは言え、あんな大群のカメムシを自分の畑で見たいとは思わないから。そして、日本の食卓に絶対に欠かせないものでもないから。
パプリカはハンガリーの人たちが大切に育てればいいと思う。
今日本に輸入されているパプリカはオランダ産のものか、もしくはそのオランダ式の種子と栽培法を導入した韓国産のものがほとんどだそうだが・・。
ハンガリーで思い出した。
その昔、ハンガリーのブダペストという街で年末を迎え、年越しをしたことがあったのだが、大晦日にハンガリーの若者が飲んだくれて、飲みおわった瓶ビールを街中で割りまくって暴れていたので、元旦の朝、ブダペストの街はガラスの破片で溢れかえっていて、街歩きが非常に恐ろしかった。
溢れかえっていた、と言っても、パプリカにつくカメムシほどは溢れかえっていなかったと思うけど(笑)。