薪ストーブ始生代・総集編③「台風で倒れた神社の薪」編
1.原木を入手する
先月、大きな被害を出して通りすぎた台風21号。
我が家の近所にある神社にも大きなひがいをもたらした。
境内には、強風で折れた杉やひのきの枝や葉っぱが足の踏み場もないくらいに山積し、それを片付けるのをご近所のみなさんと一緒に手伝っていた。
そのとき、神社の裏の森の木が何本も倒れたという話を聞いた。
昔なら、村中の家が、煮炊きや風呂焚きをすべて薪で行っていたので、すぐになくなったのだそうだが、いまやそんな家も皆無。
なんとも寂しい話だ。
歩いていける距離の森や山にこれだけ豊富な燃料があるというのに、わざわざ一万キロも離れた場所から石油を運んできているのだ。
時代が変わったから、と一言ですませてしまって本当にいいのだろうか?
取り返しのつかないことにならないのだろうか?
やれやれ、それはとにかく、倒れている木はそのまま朽ちるだけだから、好きなだけ持っていっていいよ、と村の人に言われた。
「本当に、いいんですか!」
と、テンションが急上昇だ。なんとも現金なものである。
ざっと見渡すと、車が入れる場所から近い距離にあるものは全て檜(ひのき)の倒木だ。
直径が30㎝前後の太いものも多く、数えたわけではないが、おそらく20~30本は倒れているのではないだろうか。
そして車から最も離れた場所に広葉樹(この時点では樹種は不明)が何本か倒れていた。
数本とはいえ、かなり太いものもあり、全部で一体何トンほどあるのか、把握しきれないほどだ。
これほどリアルな「嬉しい悲鳴」をあげたのは人生で初めてかもしれない。
それはまさしく、嬉しすぎる悲鳴に他ならないものだった(笑)。
もちろん、災害で被害を受けた村の人がたくさんいるので、台風はもう来ないでほしいが、倒れた木は最大限利用しない手はないだろう。
とりあえず、広葉樹のある場所までチェーンソーを持って行ってみた。
直径が1mをゆうに超える巨木が台風で傾いたので、チェーンソーで切断されていた。その横にも、相当太い木が何本も横倒しになっている。
この辺は相当難易度が高そうなので、とりあえず初心者でも切れそうな手頃な広葉樹をチェーンソーで玉切りしていくことにした。
下に杉の木の切れ端を置いて台にして、チェーンソーの刃で土を切らないように細心の注意を払って。
20ほどの玉を切った。重さにして、せいぜい200kgぐらいだろう。
それにしてもこれは一体何という種類の木だろうか。広葉樹の常緑樹であることは間違いなさそうだが、名前は全くわからない。
玉切りしたものの、車までの距離がかなりあるので、一旦切ったまま放置しておく。
少し休憩をして、別の木を探すことにした。
すると、すぐにはち切れそうな、むちむちの広葉樹が目に入ってきた。
2.ヤブニッケイと対峙する
神社の裏の森で、台風で倒れた木を貰えることになり、チェーンソーを持って森の奥の広葉樹が倒れている場所で手頃な広葉樹を玉切りした。
そしてふと隣をみると、先程切っていた広葉樹よりずっと太い、おそらく直径が30㎝を超えるような、ツルッとした樹皮を持つ広葉樹が目に入ってきた。
みるからにパツパツに詰まっていて、ものすごく重量感がありそうだ。
移動させようにも、文字通り「びくとも」しない。なかなかの木だ。
さぞいい感じの薪になってくれるだろう。
よく見ると、この木の下に針葉樹の細い枝が挟まれていて、土から浮いた状態になっているようだ。
それならチェーンソーを入れても刃が傷まないかもしれない。
というわけで一番切りやすそうなところを両断した。
繰り返すこと四回。
とりあえず玉が四つできた。
しかしこれはこれで問題がある。
重すぎて車のおいている場所まで運べそうにないのだ。車までは、ひのきの枝が散乱した足場の悪い山道を100mほど歩き、さらに段差を越えなければたどりつけない。
足場の悪い山道の100mは、普通に歩いてもなかなか骨の折れる作業なのだ。
実際に持ってみても、せいぜい持ち上げて数歩歩くのがやっとだ。
仕方がないので、薪割りができる広い場所まで少し移動させて、持参していたフィスカースのハンマー斧で半割りにしてから車まで運ぶことにする。
即席の薪割り場だ。
ハンマー斧を打ち付けること、10数回。
パカーンと割れた。
普通の斧ではかなり厳しい、極太の玉も、この斧なら割れてくれる。
半分にしてなんとか持てる重さになったので車まで8往復。
そこまで運んだところで陽が暮れて、森は真っ暗な闇に包まれた。
神社の薪運び、一日目はこれでおしまいだ。
後日、このむちむちの広葉樹の樹種を調べてみた。というか、奥さんに調べてもらった。
奥さんによると、この木は「ヤブニッケイ」というシナモンの仲間で、日本原産の唯一のシナモンの種類だそうだ。
その仲間の「ニッケイ」という木は、ニッキとも呼ばれるシナモンの木だ。香りが高い、お馴染みの香辛料だ。
その仲間なので、切っていても、割っていてもとてもいい香りがした。
そのヤブニッケイの、巨大な玉が転がっていた。
真ん中が空洞になっている。
腐ったのか?朽ちたのか?
なんだかこの世のものとは思えない。不思議な物質に見える。
これ、なんだろう?
いや、ヤブニッケイの玉が朽ちたものなんだろうけど、でも、なんかジュラ紀とか白亜紀とかから存在してそうな、おかしなものに見えるわ。
シナモンの仲間というだけあってヤブニッケイの薪を焚くと、いい匂いがするのだろうか?楽しみだ。
まあ、ともあれ、薪活がいきなり活発になってきた。
というか、ようやく薪ストーブブログらしくなってきた(笑)。
さあ、薪割りするぞー。
3.玉切りした神社薪を薪割り場に運ぶ
神社の裏の森で倒木を貰うことになり、玉切りして、少しだけ持って帰ったところで陽が暮れた。
そして次の日。
奥さんと二人でせっせと家の駐車場まで運んできた。
これは、まだ名前のわからない常緑樹の広葉樹。
名前が知りたい。
どんな割り味か、ひとつだけ割ってみたが、結構割りやすかったので安心だ。
※後日、近所のおっちゃんに「これ、椎の木ちゃうか?」と教えてもらった。火持ちがよくて、いい薪になるらしい。
そしてこっちは名前の判明した木。
ヤブニッケイの玉(の半割り)だ。
直径は30㎝前後。
前日に運んだものが4玉、そしてまだ運んではいないけど、次の日に玉切りして森に放置してきたものが3玉。1玉が30kg近くありそうなので、合計7玉で200kgぐらいにはなる。
まあ、一冬で焚く量を考えるとまだまだショボいが、それでも大きな収穫だ。
うまくチェーンソーが使えれば、もっと切り出してこられそうだ。
そして、神社の裏の森には、まだまだ無数の(といっても差し支えなさそうなほどの)檜(ひのき)の木が倒れている。
秋の遊び焚きで針葉樹の重要性、というか有用性が分かったので、ひのきもある程度確保したい。
ひたすら、時間がない。