薪ストーブクロニクル

食とエネルギーの自給を目指して

僕はきこりになった 第2話『勝手に準備をする』

従業員が熊に襲われた林業会社に就職することが決まった。

 

木こりになるのだ。

 

ん?

熊?

 

ツキノワグマとかグリズリーとかそういう奴か?

 

まあ、それは一旦置いておこう。

 

林業という職種に就いている知り合いが一人もいないため、就職にあたってどんな準備をしておけばいいのか、さっぱり分からなかった。

 

面接の時に会社の代表である親方に聞いてみたのだが、

「いや、別に何も準備しなくて大丈夫」

と言われて、質疑応答が終了。

 

つまりは全くのノーヒント状態だった。

 

何も準備しなくてもいいと言われても、恐ろしく畑違いの業種に飛び込むわけで、そもそもどんな服装をして出勤すればいいんだろうか。

まさかスーツなわけないよな。

 

あれ?

靴はどうなんだろう。

 

スニーカー?

 

なわけないか。

 

またインターネットで検索してみる。

 

林業 服装」

 

すると、何枚もの服を重ね着して、暑くなったらどんどん脱いでいけるのがオススメの服装らしい、ということがわかった。

 

なるほど。

 

季節にもよるのだろうが、朝の寒さ、昼間の暑さ、夕方の冷え込み。刻一刻と気温が変化する屋外ならではの服装が必要というわけか。

さらには運動量も多いので、作業をするとすぐに汗だくになり、休憩すると一気に冷え込むということもわかってきた。

 

とりあえず、動きやすそうな服をたくさん用意しておこう。

 

靴に関しては、「チェーンソーブーツ(※)」という物があるらしい。

 

よくわからんが、今は下手に何か購入しても失敗するかもしれないので、靴のことは考えないようにしよう。

 

服装はそれでいいとして(ほんまかいな)、それよりも不安な事があった。

 

それは体力である。

 

趣味でランニングをしていたり、前職も運搬をしていたので、完全なデスクワークではないものの、体力には不安しかなかった。

 

足場の悪い山の中で、まともに動き回れるのだろうか?

 

いや、そもそも、普段から山の中で木を伐りまくっている屈強な猛者たち(想像です)についていけるのだろうか。

 

いきなりは、ついていけないにしても、迷惑をかけないためにも、せめて少しでも猛者たちとの体力差を埋めておきたい。

 

足場の悪い場所で動ける体力をつけるにはどんなトレーニングをすればいいか…。

 

考えた末に、入社までの日々を、足場の悪いビーチでランニングすることで鍛え上げることにした。

プロアスリートがオフのキャンプでよくやっている、あれだ(笑)。

 

週に数回、近くの砂浜に出掛けて、走り込む。

この程度の付け焼き刃でどうにかなるとも思えないが、とりあえず、必死だったのだ。

 

やれることはやっておこう。

 

………

 

 

入社後の結論から言うと、山登りの体力では、初めから僕はほとんど誰にも負けなかった(笑)。

キャリアの長い先輩たちも、みんなヒーヒー言いながら山登りしていた。

 

あれ?

林業の世界の猛者たちは一般人とは別次元の身体能力を持っているのかと思い込んでいたけど、意外と皆さん、普通の人々なのかもしれないな(笑)

僕はというと、登山が嫌いではないので、そして仕事で山登りができるということが新鮮で、むしろ楽しかった。

 

もちろん例外はある。

ただ一人、核融合で動いているんじゃないかという噂もあった、サイボーグのような超健脚の先輩にだけは、全くかなわなかった。

 

こんな人が存在するのか、と呆気にとられるほどの超人的な体力だった。

ほとんど人外の生命体かと思ったほどだ(笑)。

 

まあ、その先輩の話はまた後ほど。

 

とにかく、そんなこんなで、いよいよ入社する日を迎えたのだった。

 

<つづく>

 

 

※チェーンソーブーツについての補足

 

チェーンソーブーツについて少し解説しておこう。

というのも、山仕事でこのようなブーツを履いて作業している人が回りに一人もいないので(もちろん自分も含めて)、今後チェーンソーブーツについて語る機会がないと思われるからだ(笑)。

 

↓チェーンソーブーツとはこのようなものだ。

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これはハスクバーナの製品。はっきり言ってめっちゃカッコいい。

欧米の屈強な林業男が履いたら似合いそうだ。

お値段は四万円ほどだ。わお。

 

その名の通り、チェーンソーの刃が当たっても切れない堅牢な作りのブーツで、当然だが重たい。

そして靴の素材自体に柔軟性がないため、足首が完全に固定された状態で作業することになる。

完全にフラットで障害物もない場所で履くなら作業はできるが、急斜面で障害物だらけの日本の山の中でこのブーツでてきぱき作業をしている人は、それほど多くはないんじゃないかな、というのが正直な感想。

 

平地で薪作りのために玉切りしたり、薪割りするときに履けば、安全に作業ができるだろう。

ただ、繰り返しなるけど、足首が全く動かせないので、膝より下を棒で固定されたような感じが気にならない人向けのアイテムだと思う(あくまでも個人の感想です)。