僕はきこりになった 第1話『きこりになる』
今回から、新しいネタを始める。
題して『僕はきこりになった』。
なんのこっちゃ?と思われる方も多いと思うが、タイトルそのままだ。
きこりになったのである。
正確に言うと、全くのド素人から林業の世界に飛び込んで、今日で丸五年が経過した。
小沢健二の歌に
♪物語の始まりにはちょうどいい季節になったろ~
という歌詞があったと思うが、まさに新しい物語を始めるのに素晴らしい季節だ。
僕が思いがけず足を踏み入れた「林業」という、知っているようで、全然知られていない超マイナーな業界を少しずつ読者の皆さんにお伝えしていきたい。
本当はもう少し早くこのネタを書いてもよかったのだ。
林業と薪ストーブは、想像するのも容易だが、密接に繋がっている。
というか、薪ストーブの薪欲しさに林業を始めた人だっている。
薪と林業は、一番最初に思い付く連想ゲームのワードのようなものだ。
そのへんのことをチョロチョロと書いていってもよかったのだが、色んな事が起こりすぎて、そのことを客観的に語れるようになるのに時間が必要だった。
五年も経てば、客観的に語ることもできるだろう。
さて、その第一回目は、なぜ林業の世界に飛び込むことになったか、その辺りを書いてみよう。
僕の場合、もちろん、きっかけは薪ストーブだ。
薪集めが高じて樹木の伐採を手伝った時に、「あれ?林業って面白いかもな」と思ったのだ。
実際のきっかけは、このブログでめちゃめちゃ詳しくレポートした、茶畑山でのクヌギの風倒木の処理だ。
未読の方は以下のリンクを読んでみてほしい。
薪ストーブ始生代・総集編④「茶畑山に入る」 - 薪ストーブクロニクル
薪ストーブ始生代・総集編⑤「茶畑山で薪仕事」 - 薪ストーブクロニクル
薪ストーブ始生代・総集編⑥「茶畑山に引きこもる」 - 薪ストーブクロニクル
薪ストーブ始生代・総集編⑦「茶畑山での作業が一通り終わった」 - 薪ストーブクロニクル
まあ、要するに、近所のおっさんが、自分の所の山でクヌギが台風でバタバタ倒れて困っているので、薪が欲しそうな僕を手伝わせて、その倒木処理をしたということなのだが…
かつて、林業なんていう職業は、自分の頭の片隅にすらなかった。
その後、薪作りをする必要からチェーンソーを購入して使うようになった。
チェーンソーで薪作りをしている自分を客観的に眺めて、あまりの違和感に笑ってしまったくらいだ。
まさか自分の人生でこれほどチェーンソーを使うことがあるなんて、有り得ない(笑)。
という笑いだ。
そして、そのチェーンソーを使って、くだんの茶畑山での風倒木処理を経験する。
あれ、意外といけるんじゃないのか。
木を伐るというのは、面白いじゃないか。
ちょうど、その頃、引っ越しで勤め先がかなり遠くなってしまったので、家の近くで働ける場所を探していた。
林業なら、家の近くの山でも働けそうだ(まあ、なんと安直な)。
そんなことを考えていたある日、通勤の電車の中吊り広告で、『林業ガイダンス開催』というものを目にする。
もちろん、ソッコーで参加しましたとも。
そうしたら、なんのことはない。家から車で20分のところに、林業の仕事をしている会社があるじゃないか。
全然しらなかった。
しかし、ハローワークで調べてもらうと、そこの会社は求人を出していない。
ダメ元で直接電話してみたところ、あっさり採用(笑)。
明日からでも来てほしいと言われたんだけど、今の仕事の引き継ぎもあるので、4月1日から働くことになった。
それがいまから五年前。
2018年のことだ。
本当に、予想もしていなかった急展開で、林業の世界に飛び込むことになってしまった。
風倒木は(ほんのすこしだけ)伐ったことがあるけど、実際のところ、林業ってどんなことをするのか。
実は入社直前の時点でも全く分からなかった。
面接のときに説明を受けても、さっぱり分からなかった。
一つだけわかっていたこと。
入社前に、自分が勤めることになった会社のことをインターネットで検索してみたのだ。
すると、
『林業事業体の○○造林の従業員Sさん(48歳)が、○△市の山中で伐採作業中に熊に襲われて重症を負うという事故が起きました。Sさんは頭から血を流していたところを同僚に発見されたものの命に別状はなく……』
という短いニュース記事がヒットした。
………
………
僕は四月から木こりになる……らしい。
大丈夫なのか、俺?
<つづく>