薪ストーブクロニクル

食とエネルギーの自給を目指して

薪ストーブ前史・総集編⑤「けやきは割りにくい?」

長い記事が何回かに分けられると読みにくい、という話があるので、時々総集編として編集しなおして掲載してます。

決してネタ不足ではありませんのであしからず(笑)。今回は意外にも人気の高い「けやきは割りにくい?」編をお送りします。

 

 

 その1 剪定中の木をもらう

      どこかで伐採したばかりの原木が手に入らないかなー。瑞々しい木を割ってみたいなーなどと贅沢なことを考えていた矢先。

こんなことがあった。

 

なんと、近所の公団住宅の回りに生えている広葉樹を業者さん数名で伐採している現場に遭遇したのだ。


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 ↑これは木を持っていって枝だけが残った悲しい現場。

 

車を運転していたので、一度はよだれをたらしながら前を素通りしたのだが、一応ものは試しと声をかけてみた。

 

僕「あのー、伐採した木って廃棄しちゃうんですか?」

業者さん「そうだよ」

僕「その木、持っていったりしてもいいですか?(おそるおそる)」

業者さん「いいよ」

 

あれ、あっさりOKもらったぞ。

しかも、その若くて人の良さそうな業者さんは、太くて薪に良さそうな木ばっかり集めてきて、積み込む車の前にどんどん積み上げてくれている。なんて優しいんだ!

 

これはすごいぞ、と、どんどん木を車に積み込んだ。枝の伐採なので、直径が30㎝も40㎝もあるような太い原木はなかったものの、太いものだと15㎝位あって、しかも切ったばかりなのでずっしり重い素晴らしい広葉樹だ。

 

ハイテンションで積めるだけ積んで、とりあえず、近くにある、せまいアパートに持ち込んだ。ワンルーム同然のアパートの部屋には当然置くスペースはほとんどなく、仕方ないので小さい北側のベランダに運び込んだ。

 

そこでやめておけばいいのだが、まだあるはず、と、原木をゲットした場所に戻ると、まさに業者さんたちが、その木を回収車に積み込もうとしていた!

僕を見て、その業者さんのひとりのおじさんが笑いながら、「早くしないと全部持っていっちまうぞ」と言って、太めの木を置いておいてくれた。

きっと、あの木を持っていった奴はなんだったんだ、と話題になっていたのだろう。みんなニヤニヤしながら僕を見て、一人が「そんなにたくさん木を何に使うんだ?」と聞いてきた。

薪ストーブの燃料にする旨を伝えると、さらに使えそうな太い枝なんかを固めて置いてくれた。

 

2回車に積み込んで、合計何百キロくらいになったんだろう?

とりあえず、北側のベランダに置けない分は狭すぎる玄関に置いておいた。

仕事から帰ってきたらうちの奥さんがビックリするだろうなぁと心配しながら(笑)。

 

それにしても、木を伐採して、回収車に積むまでの時間は一時間もないくらいだ。たまたま通りかからなければ、いかに近所とはいえ、伐採現場に遭遇するのは難しかっただろう。

これはツイているんじゃなかろうか! 

 

その2 けやきと判明

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↑剪定後のけやき。この木を剪定したおこぼれをいただいた。

 

木を貰った業者さんに、ふと思いついて、これが何の木か聞いてみた。

「おお、これはケヤキだ」

とのこと。

そのときは、「ふーん、ケヤキかぁ」と思っただけだったけど、なんとなーく引っ掛かるものがあって、バカみたいな量の木を全てアパートに運び込んでから検索してみた。

 

検索ワード「ケヤキ 薪割り」

  

すると、案の定というか、恐れていた通り、というか、薪割り界でも樫(かし)や榎(えのき)の木と並んで一、二を争うほど割りにくい木材であることが判明。

 

堅くて割れないのではなく、繊維が複雑に絡み合って、スパッと割れてくれないようだ。

 

しかも、放っておくと、乾燥してさらに割りにくくなり、多くの薪割り人に薪割り機を購入させるきっかけとなる、そんな恐ろしい木であることが、さらに判明。

 

おいおい、アパートにしばらく置いておいて、都合がよくなったら、実家の薪場に運べばいいやとか思ってたけど、それじゃ全然駄目じゃないか!!

 

さらに調べたところ、ケヤキには三種類あって

①赤ケヤキ

②青ケヤキ

③ミズケヤキ

とあるうちの、①と③ならなんとか斧で割れるらしいが、②の青ケヤキだけはいかんともしがたい、最凶の木であることが、ダメ押しで判明。

 

ここはひとつ、持ってきたケヤキが青ケヤキでないことを祈るだけだが、なんとなく、皮が青というか緑っぽいんですが、これってヤバくないですか(汗)。

 

しかも、ケヤキは独特の臭いにおいを放つという、ありがたくないオプションまでついているらしい。これって、生の木がくさいの?それとも、火にくべたらくさい煙が出るの?どっちなんだろう。いわくありまくりのケヤキこのケヤキを拾ったのは幸運だったのか、それとも…

 

とにもかくにも一刻も早く運んで、チェーンソーで切って、薪割りせねば!!

急に焦ってきた。

 

その3 狭いアパートに並べる

 もらったケヤキの原木(といっても直径15㎝ぐらいまでの細い木)をアパートに置いてしばらく保管する。

広い土地に置くなら、ほんのささやかな量なのだが、1DKの狭いアパートに置くには充分すぎるくらいの量だ。

 

玄関に。
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北側のベランダに。

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反対側にも、文字通り所せましと置きまくる。
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南側のベランダでは、長すぎて車に積めなさそうな木を、ノコギリで切る。

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 細いやつだったからなのか、ノコギリなら意外と簡単に切ることができた。

 

 夜にリビングで寛いでいても、木が目に入る。うーん、いい光景だ。ウイスキーを飲みながらテーブルに置いた木をなでなでしたり、意味もなく長さや直径を測ったり。

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「おお、この太さの木なら、20本あれば1立米の量になるぞ」と意味もなく計算して、奥さんに苦笑されたりしながら、戦利品であるケヤキの木を眺める。

まさか樹種など全く興味も知識もなかった自分が「これがケヤキかー」とか言いながら、ニヤニヤ木を眺める日が来ようとは、夢にも思わなかった。

同じように、チェーンソーや斧のカタログを食い入るように見たり、実際に使ったりすることも、少し前なら想像さえできなかった。人生と実には分からないものだ。

 

まあ、そんなこんなで、まるでコンパニオンでも傍らにいるかのように木置いてそれを肴にお酒を飲む。夜が更けていく。

そういえば、知り合いの農家のおじいさんが、「薪を必要以上にいじるやつは昔からスケベェやっていうぞ」と言っていた。

ドキリ。

 

部屋に木を置いてみて気付いた。ケヤキは特有の臭いがあるとの話だったが、いまのところ特に気になる臭いはない。

 

種類によるのだろうか。それとも薪割りすると臭くなるのだろうか?

とにかく、割りにくいともっぱらの噂なので、一刻も早く薪場まで運んで割ってしまいたい。しばし、そわそわした日々をすごした。

 

その4 あわてて薪場へ運んで玉切り

 もらったケヤキを、なるべく早く割るために、実家の薪場まですみやかに運搬する。

なにしろ薪割りの業界でも有名な性悪の木材としてその名を轟かせているケヤキ

多くの薪割り人に、薪割り機購入を決断させるその割りにくさとはいったいどんなものなのか。いや、なるべく割りやすいままの方がいいので、そんな割りにくさは経験したくないので、超高速で運搬する。

1分、1時間ごとに割りにくさが数%ずつ高くなっていくはずだ、知らんけど。

 

で、車に積む。これくらい積んだら、ブレーキの効きが悪くなってきた。薪ストーブのブログを色々見ていると、えげつない量の木を積んだ過積載の軽トラがよく登場するが、自分はかなりのビビりであり、また移動距離が長くて非常に恐いので、満載積むのはやめて、とりあえず半分だけ運ぶことにする。

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往復2時間。仕事で往復するときは気持ちが萎えるが、ケヤキのためなら、なんてことのない距離だ。

そして到着。薪場にぶん投げる。

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そしてそのままの勢いで「オラオラ」と玉切り。

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伐採現場に遭遇したのが水曜日で、その3日後の土曜日には運搬して玉切りした。明日は割りまくる予定。これ以上早く割ることは物理的に不可能だろう。これで割れなかったらもう仕方がない。たいした量でもないし、気長に割るさ!

 

しかし、ケヤキ。比重は0.69~0.7となかなか高め。薪の日本代表クラスであるナラよりも少し高いくらいで、かなり、優秀な密度である。火持ちも良いようだ。実際、こうして玉切りしてみると、細めの原木であるにも関わらずかなりずっしり腕に来る重さだ。なんかワクワクしてきたぞ。

割りにくい、とのことだがもし割れなければ丸木のまま数年乾燥させてでも焚いてやるさ!

 

その5 フィスカースでけやきを割る

35㎝ほどの長さに玉切りしたやや細目のけやきは割れるのか?

 

いきなり綺麗な玉で割れなかったらショックが大きいので、とりあえず厄介そうなY字の玉を選んでフィスカースを降り下ろす。

 

パカン。


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あれ、一発で割れた。

噂に聞いていた、繊維が絡みつく頑固さはあまり感じない。

そして、めっちゃ綺麗な木の色が見える。今までの長期間放置プレー状態だった木々とは雲泥の差。生まれたばかりの赤子のように綺麗な色だ。芯の部分の赤っぽい色と白のコントラストが美しい。

調子に乗ってパカパカ割りまくり、30分ほどで終了。


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軽めのひと山ができた。もちろん、全然大した量ではないが、それでも身体にみなぎる達成感。

 

赤けやきだったから割りやすかったのか、それとも伐採してすぐだったから割りやすかったのか、そもそも玉の直径が小さかったからなのか、それはよく分からないけれど、とにかく結論としては、

 

けやきはとにかくすぐに割れ!

すぐに割ったら割りにくくない!

 

ということでいかがでしょうか?

 

ちなみに割ってすぐの含水率は30%以上、物によっては高すぎて測定不能と出た。

気長に2年くらい乾燥させますか。

 

しかし忘れてはいけないのは、これで運んだケヤキは約半分ということ。まだ残っている。割りやすかったので調子にのって、しばらく放置したらどうなるか実験をしてみたいと思う。

2、3ヶ月以上放置したケヤキは、割りにくくなってしまうのか、それとも大丈夫なのか。また結果が出たらレポートしたいと思う。

 

さて、その後日談。

 

その6 しばらく放置していたけやきを割る

 公団住宅でもらったけやきを薪場まで運んですぐに玉切りして、太めのものは割ってみた。

けやきは割りにくいという話を聞いていたので、なるべく早く割った方がよかろう、という焦りもあって、伐採後一週間以内で、ほぼ2/3を切り終えた。

細いものが多かったので、玉切りだけで終えたものもあったが、一通り斧を入れてみたものの、伐採してすぐだったためか、意外にも素直に割れてくれたのだった。

 

問題は、その時間がとれず、残りの1/3が放置されたままになっていたことだ。

 

そのままほぼ三ヶ月間放置していた。

引っ越しのどさくさで、けやきも車に積み込んで全て薪場に運び終え、先日ようやくチェーンソーでの玉切りを終わらせた。

 

あまり太いものは残っていないが、とりあえず斧を手にけやきと対峙してみる。

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いや、さすがにこれは細いな‥。

楽勝だろう、と思って斧を降り下ろした。


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案の定、楽勝だった。

時間の経過で割りにくくなっている印象はない。

 

もう少し太くて、節のあるものを選んでもう一回割ってみる。

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よいしょ。
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やっぱり楽勝。三等分にしておいた。

 

細いものばかりだったので、結局割らずに腕薪にしたものも多かったが、とりあえずけやきはすべてしかるべきサイズの薪にすることができた。
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結論としては、けやきは細いものは別に割りにくくないが、繊維がまっすぐではない印象を受けたので、太いものだと割りにくい、と言われているのもうなずける気がした。

 

またいつか、太いけやきが手に入ったら、あらためてけやきについて書いてみたいと思う。

 

完全な生木、しかも割っていないものが多いので、実際にストーブで焚くのは来年以降を予定している。

 

とりあえず、今回のけやき騒動はこれでおしまい。

結局割りにくいのか、そうでないのか、よくわからなかった(汗)