フィスカースの斧
お風呂に入りながら、薪ストーブグッズが載ったカタログの斧のページを何度も何度も読み返しているうちに、カタログがだんだんボロボロになってきた。
そして薪割り斧決定。
フィンランド製の斧、フィスカース。
カーボン鋼という謎の素材の斧頭部分と、グラスファイバー製の柄を持った21世紀の斧。
職人が一本ずつ手作りして仕上げる伝統的なものの方が断然趣味にあっているのだが、このフィスカースの斧の持っているらしいミスショットしてもびくともしないという強度に惹かれて購入決定。
とは言っても、外国製の薪割り斧を売っているところなんて、近所には全くない。薪ストーブの代理店なんかに行けば当然あるのだろうけど、それも気軽に行ける場所にはない…
なので、必然的に通販ということになる。
Hearth and Home 暖炉家という薪ストーブ専門の通販サイトが圧倒的に良心的だったので、ここで購入。
このフィスカースX25という斧が、薪割りの相棒として我が家にやってきた。
薪割り斧選びは悩ましい
薪割りのためには、斧が必要だ。そんなことは、数多ある薪ストーブブログをいちいち覗くまでもなく、誰にでも分かる常識だろう。
しかし、ではどんな斧をチョイスするかということになると、これは簡単には事が運ばない。なにせ世間には、デザインやタイプや価格や重さがまちまちの多種多様な斧が存在してる。国籍も、日本代表の和斧だけでなく、ヨーロッパ各国から代表選手が送り込まれてきている。
世の中にこれほどたくさんの種類の斧があるなんて、おおよそ考えたこともなかった。
そんなわけで先達の意見を参考にしようとネットサーフィンしてみる。ふむふむ、「一本目に選ぶべき斧」なんて言うドンピシャなタイトルで色々記事が出てくるじゃないか。
たとえばヘルコ・スプリッティングマスターDT6。
カタカナが多すぎていまいちどんな斧なのかニュアンスは伝わってこないけど、この斧はドイツ製らしい。それだけで期待値はぐーんとはねあがるぞ。なにせ、かのベルリンフィルのある国の斧だ。さぞ精巧にできていることだろう。
しかし、どうもこの赤と青のカラーリングが個人的にはちょっとひっかかるので、他にも探してみる。
かなり多くの薪割りびとたちが使っているのは、グレンスフォシュ・ブルークというスウェーデン製の斧らしい。
いかにも自分がイメージしているような、そそる外観。職人が一本ずつこだわって作っているらしき説明。しかし、これはめっちゃ高いので、保留。
いい斧だけど、最初はもう少し違う斧で慣れてから購入すべき、という意見も見られたからだ。
あとで分かることだけど、はじめのうちは結構ミスショットをしてしまう。斧の柄で玉を打ち付けて、両手がビリビリと痺れることがよくあった。これはほんとに痛い。
これを繰り返すと、いかに頑丈なヒッコリー材を使った柄でも、折れる原因になりかねないそうだ。薪割りに慣れてくると、ほとんどミスヒットしなくなる(らしい。私はまだときどきやらかす)ので、購入するにしても、薪割りが上達してからでもいいんじゃないかと思った。
さて、じゃあどの斧にすればいいんだろうか?
長考に入る。
僕らの薪に今年も雪が降る みかんの上に白い雪が積もる積もる
今年は雪が多い。
災害が出ている地域もあり、そうでなくても生活に支障が出るような積雪がこんなに何度もある年は久しぶりのような気がする。
さて、これは現在の薪場の様子だが、ご覧の通り雪である。
雪が降っていないと思ってちょっと薪割りをしようかと思ったら、どーーっと降ってきた。割った端から薪に雪が積もってきて、これはいかんと思い、終了。
薪場の近くにあるみかんに似た柑橘の木も風情のある雪の景色に変わっていた。
このみかん似の柑橘は酸っぱくてそのまま食べても美味しくない。近所のおばあちゃんが名前を教えてくれたのだが、忘れてしまった。
薪ストーブ前史② お蕎麦屋さんと針葉樹
知り合いのお蕎麦屋さんが、薪ストーブユーザーで、何故か(本当に何故か)山を所有していて、玉切りした大量の針葉樹を敷地に置きっぱなしにしていた。その風貌からして、すでに玉切り後1年ぐらいは経過しているものと思われる。
そして、何故か、自分達は使わないから好きなだけ持っていっていいですよ、と言われていた。
昔は「薪ストーブで針葉樹は焚けない」と都市伝説のように伝えられていたけれど、今ではよく乾燥させれば焚けるというのが常識になっている。
その当時は、まだ薪を割り始めたばかり。まだほとんど薪がないけれど、そして薪棚すらないけれど、この針葉樹の玉を割ったら、結構な薪ができるんじゃないのか、と見ただけで心が踊る。というか、木をもらえることがこんなに嬉しいことだとは、薪ストーブの導入を考えるまで、想像さえもしていなかった。
ありがたく頂戴することにして、ちょうど帰省していた兄をつかまえて、車2台に満載に積んで、実家の庭に運び込んだ。
こんな感じでウッドデッキに置いて、
それでも置けないぶんは、別の場所に。
おおおお!
玉がいっぱい!
本格的な薪割りが始まりそうだ!
薪ストーブ前史① ヒラリーとトランプと針葉樹
時計の針を少し戻そう。
実家の建て替えの際に、「薪ストーブを設置したらいいんじゃないかな?」と軽い気持ちで提案してから半年。実家では、薪ストーブの導入が真剣に検討され始めていた。
その頃、事情があって僕は病院にいた。ちょうどドナルド・トランプとヒラリー・クリントンによる大統領選が行われていたのをだったので忘れもしない、やや暑かった秋。
病院の待合室のテレビは開票速報がひっきりなしに情報を更新していた。
世界の趨勢を決めることになりかねない、重要な選挙。そして、それとは無関係に動き続ける自分の人生。
まさかそのアメリカ大統領選と時を同じくして、自分が必死こいて薪を割ることになるとは、さすがに想像できなかったけれど、事実、薪を割っていた。しかも、乾燥した針葉樹の玉…その数50以上。
まずは、その辺りから話を始めることにしよう。
#針葉樹
#薪割り
#クロニクル
薪ストーブと味噌作り
薪ストーブの薪作りは味噌作りに似ている。
寒さをしのぐ暖房と身体を作るたんぱく質。どちらも暮らしになくてはならないものを、お金を介さずに自分の手で作り出すことができるから。
もちろん、ストーブ本体は基本的にはお金を出さないと買えないし、味噌作りに使う糀や塩も自分で作るのは難しい。
しかし、暖房に使うエネルギーとしての薪は、苦労はあるにしても自分で探すことができるし、味噌にしても生きるのに不可欠なたんぱく質や調味料を自分の手で作り出す行為であることは確かだからだ。
味噌と野菜を作れば、なんとなく食卓が整う。もちろん肉や魚はないけれど、必要最低限の栄養は十分賄うことができる。味噌作りは自給自足のドアを開ける行為なのだと思う。
味噌を作ったり、薪を作ったりする行為は、生きることに直結している。
そんな気がする。
たぶん…
薪を割りながらそんなことを考えたりする。
はじめまして
はじめまして。
私たちのご先祖さまである昔の百姓たちが当たり前のように行なっていた食とエネルギーの自給。
お金で買った方が圧倒的に効率もよくて安上がりになるこの21世紀において、酔狂にもその食とエネルギーを自給して暮らしてみようという、無謀な取り組みを始めます。
とは言え、まだ街中の集合住宅で暮らす身であり、ベランダ以外に自分の庭と呼べるものさえありません。
つまり、自給率ほぼゼロパーセントからのスタートです。何から手をつけようか、ちょっと検討もつきませんがとりあえず、なんとかなるでしょう。
とっかかりとして暖房器具界のオフグリットアイテム、薪ストーブのお話からスタートです。
ごゆるりとお付き合いくださいませ。