薪ストーブ前史⑱けやきは割りにくい?3
もらったケヤキの原木(といっても直径15㎝ぐらいまでの細い木)をアパートに置いてしばらく保管する。
広い土地に置くなら、ほんのささやかな量なのだが、1DKの狭いアパートに置くには充分すぎるくらいの量だ。
玄関に。
北側のベランダに。
反対側にも、文字通り所せましと置きまくる。
南側のベランダでは、長すぎて車に積めなさそうな木を、ノコギリで切る。
細いやつだったからなのか、ノコギリなら意外と簡単に切ることができた。
夜にリビングで寛いでいても、木が目に入る。うーん、いい光景だ。ウイスキーを飲みながらテーブルに置いた木をなでなでしたり、意味もなく長さや直径を測ったり。
「おお、この太さの木なら、20本あれば1立米の量になるぞ」と意味もなく計算して、奥さんに苦笑されたりしながら、戦利品であるケヤキの木を眺める。
まさか樹種など全く興味も知識もなかった自分が「これがケヤキかー」とか言いながら、ニヤニヤ木を眺める日が来ようとは、夢にも思わなかった。
同じように、チェーンソーや斧のカタログを食い入るように見たり、実際に使ったりすることも、少し前なら想像さえできなかった。人生と実には分からないものだ。
まあ、そんなこんなで、まるでコンパニオンでも傍らにいるかのように木置いてそれを肴にお酒を飲む。夜が更けていく。
そういえば、知り合いの農家のおじいさんが、「薪を必要以上にいじるやつは昔からスケベェやっていうぞ」と言っていた。
ドキリ。
部屋に木を置いてみて気付いた。ケヤキは特有の臭いがあるとの話だったが、いまのところ特に気になる臭いはない。
種類によるのだろうか。それとも薪割りすると臭くなるのだろうか?
とにかく、割りにくいともっぱらの噂なので、一刻も早く薪場まで運んで割ってしまいたい。しばし、そわそわした日々をすごした。