薪ストーブクロニクル

食とエネルギーの自給を目指して

薪ストーブデボン紀③ 銀杏と初焚き

銀杏の季節だ。
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9月末から10月の頭にかけて、近所の神社を散歩すると、独特の匂いで満ち満ちている。
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落ちてる落ちてる。大量の銀杏だ。

 

むせかえるような、あの匂いがこの空間を支配していて、なかなか強烈だ。

 

最近知ったとこだけど、銀杏の粒にも大きさにかなり個体差があり、特に粒が小さいイチョウ、粒が大きいイチョウ、と木によって違うみたいだ。

そして、我が家の近所のイチョウはかなり大粒の銀杏を落としてくれているみたいだ。

 

さて、銀杏を収穫しよう。

1日では拾える量も高が知れているが、何日か通うと、大量の銀杏が拾える。

 

拾った銀杏をかごに入れて、近くの川に一晩浸けておく。
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川に浸けると、外の臭い果肉がとれやすくなる。
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一晩も浸けておかずに川ですぐ果肉をむいても、ほとんどちゃんとむけるけど、一晩浸けておいた方が、後で例の強烈な匂いが消えやすいと思う。

 

果肉をむいた銀杏を天日で数日干す。
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この間に匂いも消えていく。

 

さて、準備が完了した銀杏を試食してみたいなーと思っていたら、うまい具合に夜が冷え込むようになってきた。

 

こうなったら焚くしかない。
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まだ炉台周辺の準備は万端と言い難いけれど、見切り発車で初焚きだ。

 

お湯を沸かしつつ、銀杏を天板に置いておく。
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置くこと一時間。

さて、割ってみよう。
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・・・?
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色悪いなー。

そして硬いなー。

全然美味しくない。

 

これは煎りすぎてカチカチになってしまったようだ。

 

気を取り直して、もう一度。

今度は15分後に割ってみる。

 

どれどれ?
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なんか木星みたいな縞模様の色ムラがあるな。今度は、加熱が足りなかったようだ(汗)。

 

もう少し追い天板してみよう。

 

ふむふむ。
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ようやく美味しい銀杏にありつけた。

 

本当は天板で10分から15分でうまくできるみたいだけど、初焚きした夜はまだ寒さが本番じゃなかったから、追加薪をせずに鎮火方向に向かっていたので、天板の温度が足りなくて15分煎っても生焼けみたいになったようだ。

 

ところで。

 

銀杏と言えば左右対称。

シンメトリーが基本だと思っていたんだけど。
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まあ、実際この形が圧倒的に多いんだけど、そのなかに5%ぐらいの割合でテトラ型が混ざってる。
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左の銀杏がテトラ型。

ラグビーボールみたいな形状。

 

そして、めっちゃ割りにくい。

こんな銀杏知りませんでした。

 

今夜辺りからさらに冷え込んでくるみたいだ。

そろそろ、毎晩焚く季節の到来だ。

忙しくなるぞー。

薪ストーブデボン紀② まさかこんな日が来るとは

借りている土地にある大きな栗の木が今年も大粒の実をつけた。少し採らせてもらって栗ご飯にしていただいた。
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栗は落ちているイガグリを拾う方が楽だけど、まだ若い枝についているイガグリを高枝バサミで落として収穫した方が美味しい。

実も柔らかくて皮もむきやすい。

 

そして、地面に落ちたイガグリは、虫との競争もある。立派ないい栗が採れた、と思ってよく見ると先客に食い荒らされていることがよくあるのだ。

木の上の若いイガグリなら、やつらを出し抜けることが多い。

 

まあ、それはともかく、、

 

薪ストーブの話だ。

 

まさか、こんな日が来るとは思いもしなかった。

いや、少なくとも、薪を割り始めた頃は、生涯現役のつもりで斧を振るうつもりだったので(いまでもそのつもりはある)、こんな日が来るとは想像していなかったのだ。

 

そう。

 

電動薪割り機の登場である。
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繰り返そう。

 

 

電動薪割り機なのだ。

 


いやー。おおげさだけど、人生何があるか分からないものだ。

なぜなら去年までは入手するつもりなんて微塵もなかったわけだから。

 

手に入れるつもりがないものがなぜ家にあるのか、よりも先に、自分の近況を説明しておくと、今年の春から夏にかけて、半年間、脛椎の椎間板ヘルニアに苦しんでいた。

まあ、症状としては軽い方だったので、生活に大きな支障を来すことはなかったが、薪割りなんて考えられない痛さと腕の痺れに耐えていた。

ひょっとしてこのまま治らなければ、手割りなんて不可能、そうなると薪割り機のお世話にならないといけないのかな、と薪ストーブ生活を始めてから、初めてそう思っていたのだ。

本当にそれまでは一度と導入を考えたことすらなかった。

 

しかし、幸運にもヘルニアはほぼ完治。

またこの秋から元気にフィスカースの斧を振り回している。

 

あれ?じゃあ薪割り機、いらないですよね(笑)

 

なんでうちにやって来たんだ?

 

それは、薪ストーブの先輩が譲ってくれたからだ。

薪割り機が壊れて、新しい薪割り機を買ったんだけど、壊れた方を直してくれる達人がみつかったので修理に出したらしい。

で、おそらく直ってるだろうけど、2台も家に置くのが邪魔なので、古い方をよかったらあげるよ、と言われ、あれよあれよと言う間に我が家に薪割り機がやってきた。

 

ヘルニアとか、将来が、そんな事は一切関係なし。僕の気持ちや体調と全く関係のないところで、偶然、完全になし崩し的に我が家にお越しになられた。

 

本当に使えるか、まだ分からない電動薪割り機。

そもそも使ったことがないわけで、どんなスピードでどういう風に動くのが正解かも分からない。

 

とにかく使ってみた。
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玉を置いてみると、薪割り機が小さく見えるが、これはこのアラカシの玉がそこそこデカイのだ。直径は20センチを超えている。

 

もう使っている方はご存知なのかどうか、そもそも電動とエンジン式ではたぶん動かし方が違うと思うが、我が家に来た電動薪割り機くんはこのレバーをネズミマークからゾウマークに動かすことで、玉を矢じりの方へ押し出していって、
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そして、ぐいぐい押して割る。
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お見事!

 

直ってるかどうかわからない、というやや怪しい状態で我が家にやってきた、薪割り機くん。

ものの五分で薪の山を築く。
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まるで頼れる兄貴のような、素敵なやつなのでした。

 

そのパワーは7トン。
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まあ、7トンと言われても、ピンとこないが、体重200キロの力士が14人でぐいぐい押しているようなものか。

 

ひとつだけ気がかりなのは、消費電力が1500wという点だ。

我が家のポータブルバッテリーでは使えない、消費電力。

あれだけのパワーを発揮するためには、致し方ないのだろう。

 

まあ、しかし、基本的にはこれからも我が家は斧で割る。

身体や時間的な条件を考慮しながら、必要に応じて、薪割り機くんに助けてもらう、という感じになると思う。

 

これから本格的に使ったら、またレポートしていきたいと思う。

 

いやー、しかしまさに、犬も歩けば棒にあたるもんだ。

薪ストーブデボン紀① 台風の通過とともにシーズンイン。プリッキーヌの話

うちのブログでは9月が薪ストーブのシーズンイン。

今シーズンで6年目だ。

 

試行錯誤しながらも5年間薪ストーブと関わってきて、さすがに少し慣れてきた気がする。

小割りにする焚き付けの用意なども、割りやすそうな杉の選定から、ある程度の大きさまで割っておく段取り、そしてシーズンか近づいたら小割りにしてコンテナで積み上げておく作業まで、ほぼ無意識に身体が動く(笑)。

 

今年はどの薪から焚いてやろうか、とそんなことも考える。

楽しい薪ストーブシーズンの始まりだ。

 

と思っていたら台風がまともに接近している。

 

だいたい、普段は忙しさにかまけてブログの更新をサボるので、台風などで外作業ができないときによくブログを書いているような気がする。

いいのか悪いのか…

 

台風の備えは一応済ませたが、これで大丈夫なのか、まあ何がどう被害を受けるかは、台風が通りすぎてから確認するしかない。

 

ともあれ、新しいシーズンに入ったので、今年もサブタイトルが変わる。昨シーズンは「薪ストーブシルル紀」だったが、今シーズンは「薪ストーブデボン紀」だ。

デボン紀は、古生代におけるシルル紀の次の時代区分。

地質学的には約4億1600万年前からデボン紀は始まる。

デボン紀には何があったか、ざっくり説明すると、大陸同士がガンガンぶつかって、ユーラメリカ大陸という超大陸ができたらしい。

そしてぶつかった衝撃で山脈ができ、その山脈にぶつかった大気が大雨を降らせ、その雨で河が作られ…

まるで見てきたように書いてるな(笑)

そして、その山脈と河が地球で最古の森林を作ったとのこと。

我々が有り難く焚かせてもらっている薪というのは、4億年前のデボン紀にできた森からスタートしているといっても過言ではなさそうだ。

 

そして、河から流れ出した栄養分の高い水は、海にたどりついて豊富な魚を育てた。

そのため、デボン紀は「魚の時代」と呼ばれている。

 

まあ、そんなことはさておき、新しいシーズンの始まりに、最高級の薪が手に入ったので、気持ちはホクホクだ。f:id:akagestoves:20220919160439j:image

直径30~40センチの巨大なアラカシだ。

アラカシの場合、その重さにひるむが、斧を手に割ってみると、意外と軽く割れるので、そこも含めてありがたい薪だ。

割った断面もなかなか悪くない。

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薪棚が完全に満タンになったので、駐車場の一角がどんどん薪に占拠されていっている。f:id:akagestoves:20220919160658j:image

全部で6列。
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まだ増設予定だ(笑)

 

引き続き、ぼちぼちと割っていこう。

 

 

さて、薪の話はこのくらいにして、この夏の畑の話でも少し書いておこう。

 

今年の夏はタイのトウガラシ、人よんでプリッキーヌを栽培した。

去年種取りしたものを、2月に蒔いて大事に育てること半年。

無事、収穫することができた。

はっきり言って食べきれないほどの豊作だ。

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真ん中のオレンジ色のトウガラシだけは、弥平トウガラシという日本の在来種だが、それ以外の五種類はそれぞれ舌を噛みそうな名前のついたタイの激辛トウガラシだ。

(ちなみにその舌を噛みそうな名前を列挙するとプリッキーヌスワン、プリッキーヌヤオ、ピッカリアン、デーンチーンダー、スーパーホットの五種類)

 

色々加工したり、来年用に種取りしたり。

辛いものを食べると元気が出るね。

そういえば、ブータンという国は、国民食と言える野菜がトウガラシなのだそうだ。

辛味調味料としてではなく、メインの野菜としての激辛トウガラシ。

写真を見ても、かなり過激なトウガラシまみれの料理が写っている。

なかなかパンクな国だと思う(笑)。

 

薪ストーブシルル紀④ 理想の薪を求めて~クマシデ編

理想の薪とはなんだろう。

ほんのひととき焚き火をするだけなら、すぐに火がついて扱いやすい針葉樹こそが理想だろう。

しかし夜を徹しての長い焚き火なら、そこにはもう少し火持ちのよい雑木も欲しいところだろう。

 

薪ストーブとなるとまた話は変わってくる。

まず、一晩二晩のキャンプとは必要な薪の量が違いすぎる。

キャンプなら一束の薪があればそこそこ安心だが、薪ストーブ生活の一冬に必要な薪の量となると、桁が違う。

地域やストーブの性能にかなり左右されるとはいえ、4トンや5トンは焚く、というのも珍しいことではないだろう。

 

その時、薪集めや薪作りまで一貫して行っている薪ストーブユーザーにとって、二つの事が重要になってくる。

①入手のしやすさと、②薪の割りやすさだ。

 

①に関しては、いくら最高級の火持ちを誇る樹種だと言われても、そこらに生えていない珍しい木だったら、そもそも量が集まらない。

杉やヒノキ、コナラやサクラ、クリなど、良く耳にする薪の樹種は、何よりもそこら中に生えていて手に入りやすいからこそ、薪の樹種として名前が通っているのだ。

いくら優秀でも、ツクバネガシやウバメガシなど、一部地域を除いてほとんど目にする機会もない珍しい樹種は、レギュラーの薪としては適していない。

 

②の割りやすさもかなり重要だ。

わりあいどこででも手に入りやすい樹種の中で、持って帰るのをためらう木の代表格といえば、ケヤキクスノキだろうか。

どちらもえげつないほど割りにくく、知らずに大量に持って帰っていざ割ろうとして、全然割れなくてえらい目にあったりする。

 

その意味でもやはり、コナラやクリ、サクラなどは手に入りやすい上に割りやすいという、極めて合理的な魅力があるのだ。

 

そして③火持ちのよさ、という大事なポイントもある。

いくら杉が割りやすくて無尽蔵に手に入るとしても、あっという間に燃え尽きるので、薪棚がいくつあっても足りない。

コナラやクヌギのように、そして欲を言えばシラカシやアラカシのように最高級の火持ちを誇っていれば、薪棚から薪が減っていくスピードは目に見えて遅くなる。

追加薪の頻度も下がって、運んだり薪をくべたりする全体的な労力が少なくなるのだ。

まあ、これは当たり前と言えば当たり前だ。

 

そこに、意外と盲点とも言える、理想の薪の条件がもう一つ加えたい。

 

④室内が汚れない

 

というのがそれだ。

 

乾燥させた薪を室内に持ち込むと、どうしてもポロポロと樹皮が剥がれたりして、室内を汚すものだ。

 

多少のことは気にしなけらばいいとは言え、一冬続くと、やはり皮が剥がれにくくて、汚れない薪の方が使いやすいのは間違いない。

その点ではコナラやクヌギも乾燥したら皮がベリッと剥がれたり、一部が剥離してポロポロこぼれることは日常的に起きる。

コナラもクヌギももちろん優秀な薪ではあるが、理想を突き詰めるともう少しなんとかならんもんかと、特にきれい好きの薪ストーブユーザーから聞こえてきたりするのだ。

 

で、

①入手しやすく、②割りやすく、③火持ちが良くて、④室内が汚れない。

 

そんな理想の薪があるんかい、と言われたら、現実的ではこの薪をオススメしておこう。


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シデだ。

 

シデには主に3種類ある。

アカシデ、イヌシデ、クマシデ。

 

その3種類の中でも、こいつはクマシデという種類のものだ。

 

樹種を見分けるのはやや難しいらしくて、パッと見た感じはどれも「うん、シデだな」としか分からない。

しかし、まあ、細かいことはあまり気にしないでおこう(笑)。

クマシデは他のシデ類より葉脈がめっちゃ細かいので、コツをつかめば簡単に見分けられるはず。

 

今回見つけてきたこのクマシデが理想の薪に近いのではないか、というのが今回の主題だ。

 

では早速、理想の薪の条件に適合しているか、一つずつ見ていこう。

 

①入手のしやすさ

普通の雑木林にコナラなんかに混じってシデの林が形成されているのをよく見かけた。

群生しやすいようなので、シデ類はごく普通に生えている樹種だと言える。つまり、集める気になれば、手に入れやすいだろう。

 

②割りやすさ

見た目はいかにも割りにくそうな複雑な起伏に富んだ樹皮だ。杉やクヌギのようにまっすぐの樹皮ではなく、繊維がうねっているのがパッと見て分かる。だから長らくシデ類は敬遠していたのだが、最近薪ストーブ仲間から「シデは割りやすいらしい」という情報を得たので、持って帰って割ってみた。

 

早速実際に割ってみる。
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こいつは長い方の直径が40センチオーバーのかなり極太の玉だ。薪割り台からはみ出さんばかりのでかさ。

割りにくい樹種なら、手も足も出ないサイズだが、フィスカースを振り下ろしてみると、
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まあ、割れるね。

 

このサイズで割れるということは、割りやすさは問題にならない。むしろ割りやすいと言える。

 

③火持ちの良さはどうか。

まだ焚いていないのでこれは断言はできないが、シデ類の比重を挙げておくと、

イヌシデ0.69

アカシデ0.72~0.80

クマシデ0.75

という感じだ。

コナラの比重が0.76なので、クマシデに関してはコナラと遜色のない薪と言える。

そもそもシデ類は全般的に薪炭材として昔から利用されてきた歴史があるようで、特にクマシデはカタシデという別名を持ち、その名の通り硬い。だいたい硬い材は薪としての火持ちも優秀であるはずだ。ここはまた数年後に実際に焚いて試してみるまで断言は控えるけど。

 

④室内が汚れない

シデの最大の個性はここにある。皮がしっかり幹と一体化していて、剥がれないのだ。

割って薪にしてもポロポロと室内を汚すことなく積み上げておけるので、最後の最後までストレスが少ない薪だと言える。

まあ、ここも実際に試してみて、その実態を報告する日が来るのが楽しみではあるわけだが。

 

ということで、理想の薪を求めて色々な樹種を持って帰っているが、こいつはかなり有力だ。

 

クマシデ。

 

覚えておいて損はないはず。

薪ストーブシルル紀③ 真夏の亡霊

薪ストーブを導入して5回目の冬が終わって、無事、煙突の掃除も完了した。

 

春に頸椎のヘルニアを発症したために、首に負担のかかる薪割りはもう4ヶ月ほどしていない。

こんなに薪割りをサボったのは、今の生活になってから初めての事だ。

 

つい最近、よくお世話になっていた薪ストーブブログで久しぶりに更新されていた記事を読んでショックを受けたのだが(とても有名なブログなので紹介は省く)、いつ、どんなことが起きるか分からない。そして、いつ薪割りができなくなるか分からない、というのは非常に現実的な事なのだと、自分の事を重ねて読んでしまった。

 

僕のヘルニアは4ヶ月ほど安静に過ごしていてかなり状態はよくなっている。

この夏にはそろそろ薪割りを再開したいと思って、手慣らしの雑木も持って帰ってきている。
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15センチぐらいまでの、比較的小ぶりなミズナラだ。

 

最近、一つだけ割ってみた。f:id:akagestoves:20220802092338j:image

あーこんな感じだった。

なんとも懐かしい感触だ。

 

薪ストーブライフを始めたとき、薪作りは全て手割りというのを当たり前と思って疑わなかった。

 

薪割りどころか、斧を持つ気にさえならないような身体の状態になるとは、考えもしなかった。

 

幸い、ヘルニアは手術をすることもなく快方に向かいつつあるので、まだこの先の人生で薪割りをすることはできそうだ。

そして、それはいつまでできるか分からないという、当たり前で冷徹な事実を伴った現実だ。

首や肩の痛みと左手の消えない痺れを重くリアルにこの身に感じながら、本当に、もう一生斧で薪割りをすることは叶わないかもしれない、薪割り機について調べることになるのかと、数か月の間、真剣に考えていたのだ。

 

結局、人間は頭ではいくらでも予想図を作り上げられたとしても、未来には生きられない。

現在に集中することしかできないんだと、改めて思い知らされた。

現在に集中して一心不乱に薪割りをすることしかやりようがない。

その時できた薪が数年後の自分達を暖めることになるとしても、それは現在の積み重ねの結果でしかなく、人間の営み自体が突き詰めれば、「いま」しかないのだ。

未来において、薪は残るかもしれないが肉体が滅びているかもしれない。

肉体は残っているが、薪は使えないままなくなっているかもしれない。

肉体が残っていても、精神は残っていないかもしれない。

 

結局、いま、例えば薪割りをできることに目一杯フォーカスして生きるしかない。

 

と、まあ、身体の不調は暗い妄想を育んで色々と考えてしまうものであり、身体が復活したときは、普段ならあり得ないほど、身体が動くことに感謝をしてしまうというのも、俗物的ではあるが、毎度のことだ。

 

いやー、久しぶりにどうでもいいことを沢山書いたな。

 

世界は一瞬たりとも同じ状態にはない。

もちろん自分自身もそうだ。

 

自分自身が老いて、やがて薪割りができなくなる日が来るように、世界も老いていく。

 

厳密に言うと、今のこの世界を回しているシステムが老いていくと言うべきだな。

 

ハイテク通信満載でピカピカの最新モデルにみえる世界の有り様だけど、実は間違いなく老朽化している。

そしてそのシステムの不備が、気候変動やら一部の国の食料危機やらパンデミックやら色んなところで起こる問題として噴出してるわけだけど、ついにウクライナ侵略戦争まで起こってしまった。

このあとは、どんな悲惨な事が起こるのか分からないけど、もしも今の世界が完成されたスマートなシステムであれば、この危機を乗り切ってより良い世界を作れるかもしれない。

しかしながら老いて古びた、今の世界は、この危機を乗り越えられず、温暖化も止められず、さらに悲惨な事が世界規模で起こる。残念だけど、断言できてしまう。

 

だから、と言うべきか、やっぱり、今現在にフォーカスして暮らすのが重要だと思う。

 

薪割りをできるうちは、目一杯薪割りを楽しもう。

願わくは、薪割りや自分で食べ物を作り育てる本来の生き物の暮らしが価値あるものとして認識される世界が来ることを祈りつつ。

しかし、その未来に心を奪われず、目一杯の薪割りに集中できる強い心を持ちたいものだ。

 

この暑い夏を乗り切れば、6度目の薪ストーブシーズンがやってくる。

38℃に迫ろうという猛暑の中で思うことでもないが、やはり薪ストーブシーズンが来るのは待ち遠しいね。

 

薪ストーブシルル紀② 煙突掃除を1年サボるとどうなるか?2年ぶりの煙突掃除

久しぶりの更新。

 

史上最速ペースで梅雨が明け、うだるような真夏の日々が始まったと思ったら、一転、台風4号の影響で梅雨のような雨が続いている。

 

そんな雨の休日。

煙突掃除をすることにした。

 

薪の割りすぎ?で頸椎の椎間板ヘルニアになったり、日々色々と目の前に立ちはだかるあれやこれやをこなしているうちに時は流れて、梅雨入り前にした方がいいとか自分で書いておきながら煙突掃除になかなか着手できずにいたのだが、今年はぜひともブログの更新がてら煙突掃除の備忘録を残しておきたかった。

 

それというのも、去年煙突掃除をサボったからであります。

 

我が家は曲がりのないストレート煙突。

世間で言うところの、煤のたまりにくい煙突の形状だ。

煙突掃除を毎年した方がいいのは当然だけど(特に曲がりのある煙突ならなおのこと)、1年サボるとどうなるか、ということも薪ストーブユーザーなら知っておく必要があるのではないか。

 

薪ストーブ初心者の人から、

「煙突掃除って1年サボるとどうなるんですかー?やっぱりヤバイんすかねー」

とか聞かれたときに、具体的な事例を話せないようでは、先輩薪ストーバーとしてもカッコがつかないわけで。

 

決して、去年煙突掃除するのが面倒だったからこんな事態に陥っているのを、美談にしているわけではない。

 

基本的には毎年掃除しようという方針には変更がないわけだが、せっかくなので、1年サボるとどうなるか、という迫真のレポートをここにお届けする次第だ。

 

まず、5年目のシーズンを終えた我が家の薪ストーブまわりの惨状をご覧いただこう。
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かつて焚き付けやトングや防火手袋が置かれていた場所に乾燥ヨモギや梅シロップのビンがわちゃわちゃと置かれていて、ある種のカオスを醸し出している。

 

全部どける。そして養生の新聞紙を張る。
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煙突周りにホコリが飛行機雲のごとく線を引いているので、それらを綺麗にする。

 

ここから先の掃除の手順については以下のリンクを参照のこと。

 

1年目

薪ストーブ原生代⑧ ようやく終了、ネスターマーティンの煙突掃除 - 薪ストーブクロニクル

2年目

薪ストーブ原生代48 梅雨入りとともに煙突掃除 - 薪ストーブクロニクル

 

さて、煙突をはずしてBトップと呼ばれる後ろに突き出た部分をのぞきこんでみると、
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なかなか灰がたまっているので、掃除機で吸い出す。
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今までとちょっとやり方を変えた部分は、ロッドを突き刺すごみ袋の突き刺す位置を一番下の角にしてみたことだ。
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結果としては、これではちょっと煤が袋からこぼれてしまうので、来年はなしかな。

下の角から20センチぐらい上に穴をあげてみたら良さそうなので、来年はそうしてみよう。

 

まあ、それ以外は大体例年通り掃除を終えて、2年分の煤の重さを計ってみる。

 

ちなみに

1年目 91g

2年目 77g

3年目 87g

4年目 サボった

 

というここまでの煤の量。

5年目の今年は何gなのか?


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結果は111g

 

あれ?こんなもんか?140gぐらいあってもよさそうだったけど。

2年間ためたにしては、思いの外少ない煤の量だった。

 

せっかく煙突掃除をしたけど、雨が続いて部屋の中が異様にじめじめしてるから、軽くストーブでも焚こうかねぇ。

 

でもその前に掃除で汚れた足の裏を風呂場で綺麗にしてこよう
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それではまた。

 

注:この記事は煙突掃除を1年サボることを推奨するものではありません。

煙突の形状や、焚き方のいかんに関わらず、基本的には1年に一度煙突掃除をしましょう。

僕もそうします、たぶん。

薪ストーブシルル紀① 2021年春夏秋冬総集編

2021年、今年の一枚。

今年もキノコをたくさん食べた。
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↑これはナメコ。幼菌と饅頭サイズに育ったものが共存している。というか、手前の饅頭サイズのものは、ヌメリスギタケモドキかと思ったが(どちらにしても食べられるキノコだ)味はナメコだった。

右上の薄い黄色のキノコはたぶんニガクリタケモドキ。食べたらダメなやつ。つまり毒キノコだ。

 

さてさて。


最後に更新してから10ヵ月が経過し、すっかりブログのことも忘れていた今日この頃。

 

世の中は、まさかのコロナ2年目が解決の糸口さえなく?過ぎようとしている。

 

まあ、誰でも分かることだけど、グローバル化の代償というやつだ。

 

そして、今の時代はこの世界中のネットワークを止めたら、車一つ作れないし、家だって建てられない。

そして、働けない人が出てくれば生活が成り立たないし、暮らしていけないから、このネットワークは止められない。

いまさら複雑すぎて、その構造を根本的に変えることなど不可能だ。

幸い、重症化する人や死亡する人も減り、ワクチンを何発でもぶちこんで、何年後になるか分からないがやがては元の暮らしに戻ることができるだろう。

 

というのが、一般的に考えられている将来像だろうか。

 

そして、脱輪しかけていた車輪が元に戻り、列車はまた暴走を始めるということか。

 

まあ、そんなことを言っても仕方ないので、自分の正しいと思う生き方をするしかないね。

 

さて、話を薪ストーブに戻そう。

 

気がついたら新しいシーズンの初焚きも終わり、待望のキノコ狩りも終わり、山が白く雪化粧をし、と思ったら麓まで雪が降りてきて、本格的な冬が来たぞーと思っていたら、もう年末。

もう年末。

もう一回、もう年末。

 

このまま更新せずに年を越すのもなんとなく気が引けるというか、ブログを閉鎖したわけではなく、薪ストーブライフもますます充実して、特に今年は寒さが厳しいのでガンガン焚いているというのに、新シーズン、一度も更新せず、というのも何なので、久しぶりに書いてみよう。

 

今回は、更新のなかった10ヵ月間の総集編的な内容になるかと思う。

 

では、改めて。

 

薪ストーブを焚き始めて5年目。

いい意味で、すっかりルーティンとなった薪ストーブライフは、今年も薪の心配もなく、初焚きも無事終わり、順調に始まった。

 

ん?

 

そういえば、相当長い間更新していないとはいえ、春ごろには何回か記事を書こうとして、途中でボツにした原稿がいくつかあった。

 

8月は個人的な小さなトラブルに巻き込まれて、借りていた薪場を引き払う必要が生じたため、そのことでかなりバタバタしていた。

ただでさえ手狭な我が家の薪置き場に、借りていた薪場から引き払ってきた大量の薪を置く場所を工面するのにてんやわんや。

軽トラ8台分の薪を置く場所を新たに配備して、我が家の庭はさらに狭く小さくなっていた。

 

人呼んで、腕薪回廊だ。

その腕薪回廊の年末の姿がこれ。
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乾燥に時間のかかる腕薪を、家から離れた薪場に積んでいたのだが、それを夏の間、汗だくになりながらせっせと運んでいたわけだ。

 

そうか、全然順調じゃなかったのか。

薪は確かにたくさんあるけど、薪ストーブライフは波乱万丈。薪集めや薪置き場は生物(なまもの)なので、どこでどうなるかわかったものではないのだ。

 

そんなわけで、仕切り直して始まった第5シーズン。

 

これまでの前例に習って、古生代オルドビス紀の次、薪ストーブシルル紀と名前を付けておく。

古生代シルル紀というのは、地球上の生物の陸上への進出が始まった時代らしい。生物と言っても、まず地上で暮らし始めたのは植物だけだ。

それまで海のなかで海藻やら、なんやらが暮らしていたのに、何を思ったか、水のない世界で暮らしてみようと思った植物がいたということだ。

動物たちは海のなかで繁栄を誇っていたので、賢明にもシルル紀にはまだ陸上へは出てきていない。

 

まあ、その植物の陸上への進出というシルル紀の特徴と、「薪ストーブシルル紀」と名付けられた、今シーズンの我が家の薪ストーブライフとの関連はいまのところ全くない。

 

まあ、あくまでもこのブログ特有の便宜的な(というには便利な分け方でもないが)呼び方にすぎない。

 

さて。

 

9月。

 

そんな今シーズンは、嬉しい悲鳴から始まった。

秋冬シーズン開始を待たずに、続々と雑木の原木を入手できるチャンスが巡ってきたのだ。

 

そのほとんどが、カシ、クヌギ、コナラという、いわゆる「薪御三家」だ。

文句のあるはずもない。

ただ、薪を置くスペースがほとんどなかったので、嬉しい悲鳴が上がったのだ。

 

なにせ、隣人トラブルのあおりで、山の方に借りていた薪を置く土場が使えなくなり、軽トラ8台分の腕薪が我が家の庭に居候しているのだ。

そして、10箇所以上におよぶ、我が家の庭を取り囲む薪棚もほぼすべて埋まっているのだ。

 

この難局を乗り切る術はひとつ。

 

シーズンのスタートと同時に、薪を焚きまくることだ(笑)

 

幸い今年は寒さが厳しいので、無駄に焚いているわけではなく、寒さに準じた上での贅沢焚きなわけだ。

 

10月を過ぎて初焚きをした後は、どんどん焚きまくって空いた薪棚は、息つく間もなく埋まっていく。

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これは、一番最近積んだ薪。

 

薪棚の崩壊を防ぐための工夫を、五年目にしてようやくきちんとしてみた。f:id:akagestoves:20211228102834j:image

 

どういうことかと言うと・・・。

 

薪は太陽があたる側が先に乾燥するので、どうしても見えてる側に傾いてくる。

薪棚が自然に崩壊する一番の原因も、片側だけが乾燥したあげくに薪棚のバランスが崩れてしまうことが挙げられる。実際に我が家で起きた薪棚崩壊も、それが原因と思われる。

なので、少なくとも半分より上の薪は、奥を低く、手前を高く積んでやると、乾燥したときにちょうどよいバランスに落ち着くというわけだ。

そして、外側の壁への負担を減らすために、井桁に組んだ外側の薪も、中心に重心がいくよう斜めに積んでみた。
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これはちょっとやり過ぎか(笑)

 

まあ、考えもせずなんとなく薪を積んできたのだが、どうも手前に傾いてくるようで、そこをなんとかしたので、今更ながら薪の積み方を調べてみたら、基本の積み方としてちゃんと載っていたわけだ。

 

五年目にしてはじめて知る真実(笑)

 

・・・

 

そうこうしているうちに、11月。

天然キノコのベストシーズンだ。

 

去年からキノコに狂い始めたのだけど、今年はシーズン開始から、パトロールに余念がなかった。


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神々しく光るナメコの群生。


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ナメコだけでなく、ヒラタケやムキタケも少し採れた。

 

週に2回ほどのペースでパトロールを続けたが、ナメコは毎回少しずつ発見できた。

今年はキノコのシーズンがいつもより遅かったみたいで、12月になってもしばらくは、ナメコやヒラタケを楽しむことができた。

 

今は真冬でも収穫できるエノキタケを収穫しては、せっせとお味噌汁でいただいている。

これがエノキタケ。

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ナメコに似ているが、軸が黒っぽいのが特徴。とてもいい出汁が出てうまい。市販の白いエノキとは似ても似つかない、天然のエノキタケなのだ。

 

また来年もキノコをたくさん食べられますように。

 

というわけで、年末だ。

 

一番初めのシーズン(薪ストーブ始生代)以来4シーズン振りに、薪の焚きがいのある、本気で寒い冬がやってきた印象だ。

薪の減りが半端ではない。

 

まあ、減っていく薪棚は、すぐに充填されていくので、薪が足りないとか、薪の節約とか、そういうキーワードは今年に関しては全くない。

 

始めにまとまった量のコナラを焚き、それがなくなると次はカシと針葉樹を組み合わせて焚き、今は桜を中心とした色んな雑木をミックスして焚いている。

 

これらがなくなったら、一番寒い一月と二月にあわせて、完璧に乾いたクヌギを投入する予定だ。

 

主力のクヌギで厳冬期を乗り切れたら、三月以降は徐々に建築端材や針葉樹をメインにした、補欠の薪たちに出番を与えようと考えている。

 

とにかく、今年もあと数日。

 

無事にブログの更新もできたことだし、安心して年が越せそうだ。

 

それでは、また来年。

 

よいお年を。